土光敏夫(6)山内校長  a.. 2012年7月5日

関西中学時代、私は偉大な人格に出会った。それは、山内佐太郎先生という関西中学第10代の校長である。
 山内校長は、兵庫県揖西村の出身、28歳のとき東京高等師範を卒業された。31歳、
京都府立第四中学校長、36歳、千葉県佐倉中学校長を経て、40歳、知事の推薦で関西中学に来任された。大正2年(1913年)9月、私が3年のときであった。

 山内先生は、日本書紀神代紀の「天壌無窮」を掲げて、徹底した精神主義の教育を行った。その目ざすところは、“国士魂”とデモクラシーとの調和であった。毎日の朝礼会や修身の時間に、先生は繰り返し次の6項目を述べられた。

第一、 至誠を本とすべし。至誠こそは精神の統治者である。誠実であること、潔白であることを中心とせよ。

第二、 勤労を主とすべし。「勤労を怠らないならば、念仏を唱えずとも、お祈りを行わずとも、神明と交り、仏陀の慈悲に浴す」という二宮尊徳と同じ思想に基づいたものである。

第三、 徳操を体とすべし。徳操を身につけるには、意志の強固と心情の高潔とを必要条件とする。

第四、 智能を用とすべし。

第五、 報国を期すべし。

第六、 国士魂を養うべし。



豊田綱領



一、上下一致、至誠(しせい)業務に服し、産業報国の実を挙(あ)ぐべし。


一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし。


一、華美を戒め、質実剛健たるべし。


一、温情友愛の精神を発揮し、家庭的美風を作興(さっこう)すべし。


一、神仏を尊崇し、報恩感謝の生活を為(な)すべし。


豊田綱領は、トヨタグループの創始者、豊田佐吉の考え方をまとめたものである。すべての従業員、経営陣の精神的支注となっている。当時は明文化されていなかったが、グループの成長に伴い、豊田喜一郎らがまとめ、昭和10年10月の佐吉の6回忌に世に出した。この「綱領」の精神は、今の「トヨタ基本理念」に引き継がれている。