ノーベル文学賞受賞が決まったトーマス・トランストロンメル氏=AP
スウェーデン・アカデミーは6日、11年のノーベル文学賞を、スウェーデンの国民的詩人トーマス・トランストロンメル氏(80)に授与すると発表した。同アカデミーは授賞理由として「凝縮された半透明なイメージを通して、現実への新しい道筋をつけた」と述べた。詩人への授賞は96年のビスワバ・シンボルスカさん(ポーランド)以来。スウェーデン人の文学賞受賞は、74年の作家E・ユーンソン(故人)ら以来。
授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれ、賞金1000万スウェーデン・クローナ(約1億1000万円)が贈られる。
◇イメージ豊か「隠喩の巨匠」...トランストロンメル氏
1931年ストックホルム生まれ。父はジャーナリスト、母は教師。ストックホルム大学に学び、心理学者として若者の更生施設などで働いた。
54年の最初の詩集「17編の詩」で高い評価を受け、以後「路上の秘密」(58年)、「半ば出来上がりの天国」(62年)などで神秘的世界をイメージ豊かに描いた。自然描写に優れ、独創的なメタファーを駆使し、「隠喩の巨匠」と呼ばれる。会話形式の詩集「バルト海」(74年)、散文詩集「荒れた広場」(83年)もある。
スウェーデンの戦後を代表する詩人として知られ、ロシアのヨシフ・ブロツキー(ノーベル文学賞受賞者)ら外国の詩人にも影響を与えた。作品は60カ国語以上に翻訳され、91年にスウェーデン・アカデミー賞、92年にドイツのホルスト・ビエネク賞を受けるなど国内外での受賞も多い。
90年秋、脳卒中で倒れ、言葉が不自由になったが、96年春に出版した詩集「悲しみのゴンドラ」(邦訳は思潮社)では俳句の詩型にも挑戦するなど健在ぶりを見せた。他に回想記「記憶が私を見ている」(93年)がある。また、音楽に造詣が深く、自らもピアノ演奏を行い、リストなどの曲をモチーフにした詩も書いている。【大井浩一】