鴨遊ぶ 



そこはすこぶる小さな公園で、敷地の大半を占める池でさえ、バスケットコートには及ばず、水深もおそらく子供の膝ほどしかない。そんな公園を十日ほど前に訪れたときに、番(つがい)の鴨を見つけた。次の日曜日に再訪したときにも、同夫婦と思われる二羽の鴨が居たから、この場所がよほどのお気に入りなのだろう。
それはよく晴れた穏やかな休日で、自分と、自分(六十手前)よりやや歳上の老夫婦とやんちゃそうな三人の小学生がいた。無人のことが多い公園にこれだけの人数が集まるのも珍しい。
老夫婦と自分はこの仲睦まじげな鴨を熱心に眺めていた。やがて、雌の方が石畳に餌か何かを見つけたらしく、池から上がってきた。上に挙げた写真はそのときに撮ったうちの一枚で望遠ではない。しゃがんでいる自分の足元のすぐ近くまでよちよちと寄ってきたのである。体格からして、写真の右上に映っている方が雄なのはほぼ間違いなく、つれあいが陸に上がって人間に近づいていったので、それを心配して付かず離れずといった微妙な距離を保ちつつ見守っている、そんな感じだった。老夫婦もすぐ近くにいて、この微笑ましい光景を眺めていた。
鳥類のなかで夫婦の仲がいいのは、なにも鴛鴦(おしどり)だけではないようだ。たとえば『つる』という落語のなかでは、一度契りをかわして夫婦になった鶴は一生添い遂げる操(みさお)正しい鳥として語られている。鴨も、少なくとも、自分が観察してきたかぎりでは、いつも寄り添うようにして行動していて仲がよい。

 おしどりにあらねど仲も睦まじく
    めおとの鴨の遊ぶ水の辺(べ)

俳句でも試みたけど、どうしても字数が足りなかった。