父倒れる
母親から夜中の12時に電話が入った。
「パパが救急車で運ばれた。あんたんとこの近くの病院に運ばれたから身柄を引き取りに行ってほしい」
というようなことを言われた。どうやら、実家から夜中に女一人で出かけていくのは場所的にもきついので、あたしの出番となったらしい。
運ばれた病院では入院用のベッドがない。ので治療が終わったら帰ってほしいそうで、身内のつきそいが必要だということ。
30分かけてタクシーで病院に到着。
案内されるとベッド上に酔っ払って赤ら顔の父親発見。
「なんだ。きたのか!ごくろうさん」
耳の裏側が血だらけ。二言三言交わすと
「いやあ、たいしたことないんだよ。エスカレーターから転んだだけだから」
それにしては頭が血だるまっぽい。
担当医師に状況を聞くと、意識はあるし脳波・血圧も異常なしで簡単な検査と簡易手術を行うとのこと。耳の裏を13針縫うらしい。あたしも状況を聞いて少し落ち着いたが、とりあえず頭を打ったということで出来る限りの検査をしてほしいと医者に伝えた。
その結果、上半身全部の断層撮影をしてもらうことになった。
で、あたしも落ち着くと、いくつかの疑問が湧いた。
①発見現場からかなり遠い病院に搬送されたのはなぜか?(新橋⇒王子)
②発見から病院搬送までかなりの時間がかかったのはなぜか?(午後10時発見⇒病院到着午後11時45分で1時間45分かかっている)
③なんで転んだのか?(酔っ払いの父が言うには押されたと言っている)
この3点にあたしは非常に不信と怒りを覚え、医者をとりあえず追及した。
オウムとこだま
12月第三週
もう待てません。。。申込書累計25枚回収。
あわわ。。。どうしよう。。。売上まだ100万超えてないょ。各担当者から家庭に対する電話督促を発令。
「もしもし~あのー○○塾の軍司と申します。いつもお世話さまです。最近のご家庭での状況はどうですか~?」
かれこれ15分も話す軍司さん。途中で
「はい。ええ。そうですね。はい。ええ。そうですね。はい。ええ。そうですね」
オウムですか?君は??
そして30分も話して
「あっ!ではまたよろしくお願い致します。ありがとうございます。はい、はい。ええ。ええ。そうですね。では。はい」
ガチャ。。。
「ふー」
しばし呆然となる軍司さん。
「あのさ、もしかしたら親に電話するのってあまりやったことない?」
「ええ。ここの家庭は初めてです」
えぇぇ!!だってあんたのとこの担当生徒じゃん!
話したことないんかいっ!!
「どうも電話の販促って難しいですね。向こうに一方的に喋られちゃって。。。授業の様子とか家での様子とか聞いちゃって、結局冬期講習のこと言えませんでした。。。汗」
汗??。。。こっちは滝汗。。。
「じゃあ、冬期講習やるかやらないかわからないわけね?」
「そういうことになりますねぇ」
なりますねぇ?なりますねぇぇ??なりますねぇぇぇ???
あんたがオウムならあたしはこだま。そんな落ちで誰か許してくれますか?(泣
確かに教室会議では
「やることに意義がある。数値責任は皆にはありませんから。生徒が参加しないなら参加しないでもいいです。ただ、販促はきちっと作業計画通りやってください。生徒と親にちゃんと講習があることを伝えてください。やるかやらないかを早めに見極めないと次の手が打てなくなりますから」
と言った。
作業はしたよ。。。でも、肝心なことは聞いてない。。。これはどうなの??
来週から講習スタート。まあ、あと5日。ここから怒涛の攻め②が始まった。
12月第三週
とりあえず。。。オセロで角4つ取られました
怒涛の攻め
12月第二週
もちろん各担当の先生にアピールを任せて待つ。
申込書15枚回収♪
ただし、この15枚のうちあたしが授業担当している生徒10人が含まれる。あとの5枚は中3の受験生やら小学部受験科とお得意様伊能家の2姉妹(のちのち登場する問題児)。
このときはこんなアピールをした。
とりあえず授業の最初。
「冬期講習は必ずやりなさい。で、今度塾に来るときに必ず申込書を持ってきなさい。いいな?」
と一人ひとりに念押し。もちろん、講習の意義も説く。
次回、生徒が来塾するのを事務室で待って、玄関からカウンターに来たところであたしは左手をにょーと出す。
開口一番あたしが
「申込書!!」
「ああ!!」
と言って鞄から出す生徒。突っ立って途方に暮れている生徒には
「どうした?忘れたの?」
「うん」
「お前やる気あるの?ないの?どっち?」
と詰め寄る。そこで
「ある」
と言った生徒には
「次回必ずもってこい。忘れたらどうする??」
と逃がさない。
「。。。。」
と黙ってしまうので助け舟。
「そんときはその場で取りに帰ってもらうからな。いいな?」
これかなり強引な商売に見えるでしょう?でも、もし生徒が「やらない」ってはっきり言った場合はその場でその理由を聞いて生徒にはもう何も言わない。その日のうちに家庭に電話して親と交渉ですよ。
なぜ、ここまでやるのか?
まず「やった方がいいと思うょ」などと先生が言っているようでは生徒はやりません。「やったほうがいい程度ならやんなくてもいいかな」と絶対に生徒は思うから。塾の先生は講習を勧めるのが当たり前。だって先生でしょ?売上以前に勉強させなくちゃ。今の子供は勉強量が少なすぎ。じゃあ、どうすんの?家で出来ないんだったらお金払って塾で勉強するしかないじゃん。こっちは自信を持って講習っていう授業を売ってるんだから「やれ」で全然構わない。そう思いません??これが出来ないなら塾止めたほうがいいし、講師もすぐに辞めましょう。だからあたしは事務室で皆から見えるところでこれをやる。やり方を他の先生に見せて教えてるんだけどなあ。
ズボンからシャツを出し後ろにはためかせながらつつつーっと森下先生が寄ってきて
「すごいですね。さすがだなあ金田先生」
さすがだなあじゃねえよ。あんたんとこの担当生徒まだ一人も出してないんだけどっ(怒
「ネクタイは??」
「あっ!しまった。ごめんなさい。するの忘れてた。。。」
ロッカーへと小走りする後姿を追いかけるように
「シャツもっ」
右手で急いでシャツをぎゅっと突っ込む森下先生。
はぁ。。。
12月第二週。。。
まだまだ惨敗。。。
冬期講習売上結果
結論から申し上げます。
冬期講習売上目標達成~♪
2 5 0 0 3 0 0 円。
ということであたしの報酬は大大好きなシガー のCOOL1箱分♪
300円だよ300円(泣)
想定していたのは40万UPの290万円。だから40万はふところにぃ~♪なんてほくそえんでいたあたしに強烈な往復ビンタ。
ではでは、その道筋を詳細にお知らせしましょう。
12月第一週
各授業担当の先生にアピールを任せて待つ。待つ。待つ。待つ。。待つ。。。待つ。。。。
待てど暮らせど申込書を誰もあたしんとこに持ってこないーーー
そして一週間経ちあたしの手元にはゼロ枚の申込書!!
えぇぇ!!
生徒から1週間待っても一枚もでてこないってのはどういうわけ??
一応あたしも様子見で特に何も言わず。ただ怖いので教室に行って他の先生の授業を聞いてみると、全く講習のアピールはしていない。いやこれじゃ申し込まないでしょ。コンビニで納品されたお弁当をバックヤードに置いたまま店頭にださないのと同じじゃん。。。消費期限切れで廃棄するつもりなのだろうか。。。
12月第一週。。。
惨敗
。。。清水さん②
新年度に向けて入塾パンフレットを作ることになった。再び清水さんと山下とあたしで会議。順調に内容や構成の話が進み
「そうそう、パンフには写真入れてビジュアル重視で今年は行きましょうよ」
と提案。
「最初のページは、やっぱり塾長の清水さんの写真がほしいなあ」
おもむろに
「俺、塾長じゃないよ」
「えぇぇ!!じゃあ、誰が塾長なんですか??(前回山下からは聞いていたが)」
「塾長は空席です」
く、くうせき!!??
「いや、普通塾には塾長がいるでしょう??てか清水さんしかいないし」
「ほら俺は現場にでてないからさ。やっぱり現場の人から塾長って出ないと現場も張り合いないでしょう」
隣にいる山下に聞く。
「お前、塾長狙ってるの?」
「ぜんぜん」
「塾長が他にいると仕事に張り合いでない?」
「いや、逆にいないと不安。。。」
「だよね」
「金田さん、じゃあ、この部分はどうしますか?」
強引に話題を変えようとする清水さん。
どうやら絶対に塾長にはなりたくないらしい。
高校生を冬期講習に参加させるため、クラス授業を設定することに前回なった。
「金田さん、本当に参加させられますかね?」
少し疑いの目で聞く清水さん。
「6名クラスにしますが、満席にするのは無理かも。。。でも三宅室長とあたしの読みでは最低3名は獲得できると思います。最低開催人数6名中3名じゃダメですか??」
「あっいいですよ。じゃあ、3名は必ず獲得してくださいね」
「わかりました。じゃあ、早急に受講料金決めてください。別に案内書作りたいので」
立ち上がってカウンターに置いてある小・中部門の講習案内書を持って帰ってくる清水さん。
机の上にそれを置いてじっと見つめると、ふいに
「中学生の2割増しで」
えぇぇ!!そんなんで今。。。いま決まっちゃうのか!!
「い、いいですけど。じゃあ、その金額で案内書作っちゃいますけど」
「あっお願いします」
さすが営業兼経理部長。仕事が速いし権限をもってると一瞬思ったが、適当とも言う。
前回の居酒屋事件の会議の際。あたしが提案した空いた時間に何か別の仕事をやろうという趣旨。清水さん、理解してくれたようで、本体が保険の代理店をやってるから同じようにそれをやろうという話が浮上。
「それって、何か資格がないと保険売れないんですか??」
「そうです。生保・損保ともに資格が必要です」
「じゃあ、その資格をとりあえず、あたし取ってみたいんですけど、難しいんですか??」
「うーん。難しくはないですよ」
横にいた山下が
「俺も取ってるから」
「そうなんだ。簡単なの??」
「初級だったらすぐ取れるよ。一夜漬けでも可能」
「じゃあ、それあたし取りますよ」
「そうですか。。。」
ちょっと乗り気でない清水さん。
どうしたんだろう。。。
数日後、教室で勤務中に清水さんから電話。
「はい、金田です」
「あっ金田さん。お忙しいとこすいません。明日の午後って時間空いてます??」
「午後。空いてますよ。何か?」
「良かった。明日3時に○○駅に来てくれませんか?この前言ってた保険のことを詳しく説明したいので」
「わかりました。行きます」
なにやらよくわからないが、説明を詳しくしてくれるとのことで出かけた。
○○駅で清水さんと待ち合わせ。
「あっお疲れ様です~」
会った瞬間、あの ただならぬ笑み が清水さんの満面に。。。なにやら嫌な予感。。。
連れていかれた先は某巨大保険会社。
応接室に清水さんとともに通される。
偉い人たちが登場。簡単に紹介しあって
「では本題に入りましょうか?」
と勝手に偉い人が話をすすめ出した。あたしの前にどさっと置かれた分厚い資料のようなもの。
「あっそれ見ながら話を聞いててください」
「あっはい」
と慌ててページを捲っていくと、どうやら何かの研修制度の説明らしい。はて?3ヶ月研修やらノルマやら独立やらという言葉が端々に見え隠れ。
な、なんじゃこりゃ。。。
で、一通り説明が終わった。が、だいたい向こうが言いたいことは理解できた。
隣にいた清水さんが、あたしに
「どうです??やってみませんか?」
えぇぇ!!
あんた、あたしを保険会社に出向させて研修受けさせようとしてるんかいっ。しかも本体の社員扱いで!!
「給料30万ですよ。30万。それで3年頑張れば独立できますしね。いい条件だと思うんですけどねえ」
つか、あたしはただ保険の初級資格とるだけでいいと思ってるんですけど(汗
とりあえず、解放されて清水さんと二人で外の喫茶店へ。
あの 笑みをたたえながら
「金田さぁ~ん。12月にしたときの契約とは全然違うんですけど、ゆくゆくは金田さんを塾から出して、うちの保険部門の営業統括部長になってもらいたいと思ってるんですけどねえ」
ああん??何言ってるの、この人??(怒
「いや、あたし社員になるつもりないんで。それに保険の資格取って、空いた時間を活用するだけのはずだし」
「そうんなんですけど。研修受けたら保険の売り方も勉強できるし、30万ですよ30万、月」
永遠と聞かされそうだったので
「いや、それはきっぱりお断りします」
と両断。悪気はお互いないんですけどね。やっぱりあの笑みには何かあったわけでした。