夢を追い続けることは楽じゃない!私がそう思ったのは、故郷の同窓会で親友の妹の大内さん43歳に出会った時でした。
彼女は現在、市内にある築40年以上は過ぎている安アパートの2階に住んでいるという。
彼女と最後に会ったのは15年以上前だが、司法書士を目指している彼氏さんと同棲していたような記憶があった。
年子の彼女は、容姿端麗で学校の人気者。
私の中学高校時代の憧れの人
でもあり不躾にも「 司法書士志望の彼氏さんはどうしてる? 」なんて意地悪な質問をしてしまったのだ。
彼女はあっけらかんとして「 彼氏とは10年以上前に別れました 」と答えてくれたのだが、後日彼女の母親にも偶然会う機会があり、喫茶店で彼女の壮絶な10年間について聞くハメになってしまいました。
ファストフードのバイトで元彼と出会う
彼女と元彼との出会いは、20年前。
ちょうど自分たちがサラリーマン人生を歩み始め、まだお互い独身だった彼女の兄と私が遊びほうけていた時期だった。
どうやら元彼君はバイト先の先輩だったようで、なんとなく仲良くなった彼女に「 とある超難関国家試験を目指しながらバイトしている 」と打ち明けたらしい。
出会った当初から、なんとなくお互い惹かれあっていたようで、
すぐに親の大反対を押し切って同棲生活に突入。
彼女は親のコネで入った旅行会社で正社員として働きながら彼を支え続けた。
手取り20万円足らずで、バイトもせず司法書士を目指している彼氏を10年以上支え続けたのだ。
家賃、食費、テキスト代、あとは僅かな外食費。彼女一人の収入ではほとんど貯金することはできなかったという。
人生の、女性として輝けるであろう10数年を彼氏のために捧げたのにも関わらず、それでも彼女は幸せだったという。
うつ病そしてDVその後辛い別れ
彼女たちに転機が訪れたのは13年ほど前だった。
旅行会社に勤めていた彼女は、朝から晩までかかってくる客からの電話に怯えるようになってしまったのだ。
いわゆる『 うつ病 』と診断された彼女は、当然の如く働くことができなくなり収入が途絶えたのだという。
時を同じくして、長年司法書士を目指してきた彼氏も、ようやく諦めがついたのか、30代半ばにして転職活動を開始。
しかし、大学を卒業してからこのかた一度も社会人経験のなかった彼氏に対して、世の中は冷たかった。
何度も何通履歴書を送っても、面接にすら呼ばれることはなかった。
この日本において、ブランク期間と呼ばれる空白があれば、有無を言わさず社会不適合者の烙印を押されてしまう。
日に日にうっぷんが溜まりだした彼氏は、彼女を責めるようになったという。
連日DVまがいの行為を受け傷ついていく彼女を見かねたご両親が、無理やり彼氏と引き離したのだ。
それでも、彼女は彼を愛していたようで、最後の最後まで抵抗したと聞きました。
最後は、兄である私の親友( 弁護士 )が法的に何かしたという顛末。
「 あのマドンナに、ここまで愛される元彼君って果報者やな 」と心の中で呟いたのは言うまでもありません。
現在彼女は、フリーランスとして講師のアルバイトをしたり、イベントコンパニオンとして派遣されたりして月10万円あるかないかの生活を送っている。
「 電話が鳴ると未だに震えるんですよ 」
と彼女はいう。電話がかかってくるような事務所での仕事は金輪際できないのだという。
PTSD
というやつでしょうか、彼女のアパートや実家に音の出る機器は一切ない。
だから、「 彼女の前では携帯電話鳴らさないでね 」とお母さんから最後に念を押されたのはいうまでもなかった…