吾人ノ目二依リテ物体ノ有様ヲ知覚シ得ルハ眼ノ構造亦(?)其ノ生理的作用ニ依ルト雖モ暗室ニ於テ*クノ物体ヲ見ル**得ザルヨリ考フレバ眼ト物体トノ間ニ尚一ツノ原因アリテ視覚を起ス者ナルヲ知ルベシ*ノ原因ヲ光リト云フ(*は私では解読できなかった文字)
現代語訳
我々の目で物体の様子を知覚できるのは目の構造や其の生理的作用によるものだが、暗室に入ったら物体を見られなくなるわけで、となると視覚に働きかける原因があるわけであり、それを光という。
つまり、目で直接感じるもののことを光と呼び、その光が物質と目の間を取り持っている、という形で光の存在を与えている。
これでは可視光しか定義されないではないか?と思うかもしれないが、そうはいってもここから光の研究は始まったのだし、おそらくはその教科書の内容を書く上ではこれから深める必要もなかったわけだろう。
ほかにも面白いところがあるが、難読ゆえにひとつ、光の速度のところだけに限定して紹介するが、
光ノ速度
光リノ走ル速度甚ダ速カナルヲシテ之レヲ測定スルノ容易ナラズ. 丁抹ノ天文学者ローメル氏ノ研究スル所ニ依レバ光線の速力ハ一秒ニ凡十九万哩ナリトス
現代語訳
光の進む速度はとても速く、これを測定するのは難しい。デンマークの天文学者ローメル(注:レーマー)の研究によると1秒に19万マイル(注:30万キロメートル)であるという
おおよそ蚕業学校には不要そうな話だが、レーマーやら、光速度やらを紹介している。もっとも、光速度の議論は当時の最先端の議論で光速度の不変性あたりが様々に議論されていた時代。レーマーの光速度の算出から200年に渡る研究を「レーマーによると」とするのはやや雑すぎる気がするが、一応当時の精度で見積もった数字を紹介している。
個人的に面白かったのは直進性の議論だが、直進性の議論は難読のため、以降折を見て、内容をよく理解してから投稿したい。
いずれにしても、光の諸性質を触れると気づいたら幾何光学が導入されて、レンズやら鏡やらの議論にたどり着く。
それは現代の中学高校の光学とも相通ずるところがある。しかし、やや冗長にも見える。