小学校で習ったっきり全く使わないものはあるものだが、これはまさにその典型例。

体積の単位「デシリットル」

 

日常では「リットル」と「ミリリットル」は用いるが、デシリットルは使われない。

例外は、小学校の授業。

 

1.なぜ小学校でそんなものを導入するのか?

実は水の体積を扱う、小学校の二年生の算数では、まだくらい上げで1000までいけないのである。

うろ覚えだが、「使う数字は100以下整数」という縛りがある。小数も使えないし、大きな数も使えない。

この縛りがデシリットルを使う最大の理由になる。

 

日常では500ミリリットルペットボトルや計量カップもミリリットル単位で記述されている。

しかしこちらは数字が大きすぎるので小学二年生では使ってはいけないのだ。

一方リットルというのは大きい。2リットルペットボトルは中に水をいっぱいにすると2キログラムにもなる。

小数を許されない以上、リットルはあまりの重さゆえ現実に実験してみましょうという授業の構成ができなくなってしまう。

 

苦肉の策としての「デシリットル」の導入である。

しかし、デシリットルなんて社会で使われていない。それゆえ、小学校の授業の時にデシリットルを習ったとき、今度は親が「デシリットル??」ってなりかねないし、まあ私は当時の段階で「デシリットルなんて聞いたことない!」って思ってたませたガキだったわけで、嫌な思いをしていました。

 

2.社会的に使われていない理由は?

「デシ」というのは10分の1を表す接頭辞。つまり、デシリットルというのは10分の1リットルなわけですが、実は接頭辞をつけた単位を使用するのは社会においては3桁ごとという慣習があります。

3桁ごとの接頭辞が使いづらい何らかの理由がない限りは、3桁ごとに接頭辞を割り振るのが普通で、

大きくなる方は

キロ、メガ、ギガ、テラ、ペタ…

とまあ、我々デジタル過渡期世代はパソコンのストレージ絡みで非常に馴染みがあるかと思います。

また、小さくなる方は

ミリ、マイクロ、ナノ、ピコ、フェムト、アト…

とこちらはこちらで物理や化学を学んだ人にはわりに馴染みがあるかと思います。

例外的に他の接頭辞を使うケースは

デシベルの「デシ」(10分の1)、ヘクトパスカルの「ヘクト」(100倍)くらいでしょうか。

デシベルは私はあまり知らないのですが、ヘクトパスカルは、それ以前使われていたミリバールと値を揃えるために使われない接頭辞を引っ張ってきたという経緯ですね。いずれにせよ基本となる単位を「バール」(CGS単位系の圧力の単位)から「パスカル」(SI単位系の圧力の単位)に変えるためだけで後は何も変わらないというもの。

 

3.リットルという単位の設定が悪かった?

リットルという単位、「一辺10cmの立方体の体積」として決まる。

そしてさっきからなぜそれを小さくするか?大きくするか?となると水を扱う時に重すぎる軽すぎる問題が起こるから、で、水の重さとして都合のいい単位じゃないことがさっきからちょこっとずつ見え隠れしている。

 

実は、重さの単位キログラムは1リットルの水の質量を原義に持っているが、この設定の時にも悩まれた。

というのも、単位を作る時に、「メートル」を基準に「十進法」を徹底して作るということで、一辺をメートルの十進で決まるような長さ、つまり、0.1メートル、0.01メートル…のどれかを使った立方体に関して、やはりそこに入れる水の重さを基準にしたかったようなのだが、いかんせん、1つずらすと体積なので1000倍ずれてしまう。

リットルに対応する水は重すぎるが、ミリリットルに対応する水は軽すぎる。

この単位を制定する以前に馴染みの質量(ポンドなど)に合わせるすべがない…

ということで困ったようなのである。

 

4.子供に質問されたらどうする?

デシリットルなんて聞いたことないし使わないんだろ、くらいのこと小学生でも思っている子は一定数いるような気がしている。それはそれで構わないと思うし、親もまあ、そういう認識でもいいとは思う。

とはいっても、大きな数や小数点といった取り扱いを対応するには一定の発達を踏むべきところがある、ことを軽視してはならない。確かに小数点も大きな数も身近なところではあるが、無理に新しい概念をどんどん詰め込めばいいというものでもない。

 

そして「世間で使わない」は合理的な発想だが、本質的ではない。本質的なところまで立ちいってみれば「接頭辞」という1つの、あるところで生まれて国際的にも認められているアイデアがある。接頭辞のアイデアはいうなれば「くらいあげ」である。なにもついてないものが10個集まるとデカ、デカが10個集まるとヘクト、ヘクトが10個集まるとキロ、という具合に、ヨーロッパ版の「十」「百」の言い方だと思えばいい。しかし、なぜか世間ではこの「十」「百」とは違って1000個集めないと繰り上がりしない。

 

とはいっても、これも日本でも別にそんなに馴染めないものではないはずである。というのも、

なにもない→万→億→兆の位上げは、10000個集めるたびに起こるもので、その細かい部分は「十」「百」「千」をくるくる回している。

 

というようなことを念頭に置きつつ、その子のその場にあった最適な答えを生成したい、と思うものである。