大学受験生の皆様
受験するときには必ず受験する大学を決めなければならないし、ほとんどの大学において、最初から学部学科を決めて受験する。この体系ができてしまっている以上、受験生は高校の段階でやりたいことを決めて、さらに自分の置かれた現状や、性格などを元に最適な受験を設計しなくてはならない。
その上で現実的には学業成績に応じた受験プランを検討するのが普通だが、正直なところ、学業成績でいけるもっとも難関に当たる大学というのがベストな解になるわけではない。
正直なところ、成績が良くて余裕を持って入っても、悪い成績ながら良くも悪くも難関突破が叶ったとしても、「こんなはずじゃなかった」ということはザラでしょう。というか、その方が普通でしょう。
しかし、やっぱり「こんなはずじゃなかった」は避けたい。
そこで大事なことを述べていこうと思う。
まず、大学選びの資料を最低限目を通そう。
具体的には受験生向けのページというやつで、そこには受験方法の詳細の他に、学部学科の構成や定員、カリキュラムが書かれており、明示的ではないものの、一応のカリキュラムの記述がある。
とは言ってもである。なにをやるかなんてわかったものではない。というか、もしそれで分かったつもりなら本当に怖い。大学側が求めているのは「何もしなくても自分でやりたい学問を勉強する意欲を持っている人」というところがある。
どうすればよいか。まずは時間割表を作る。
といっても、綺麗に作れる場合はおそらくさほど多くはない。
4年までの時間割を作るためにいくらか概念を教えよう。
(1)単位とCAP制
大学では「卒業要件」を「取得単位数」で指定するのが普通である。そこで「卒業に必要な単位数」と「一コマで取得できる単位数」を確認する必要がある。通常、前者は124、後者は2に設定されている。したがって、1年あたり31単位取得することになって、毎年16コマ、夏学期と冬学期でそれぞれ8ずつくらい取っておけば良い、という勘定になる。
ところが現実としてサボる人や単位を落とす学生がいる。そのような学生が一瞬だけ単位取得のために大量の授業を取ろうとするケースがあるが、「一年あたり」もしくは「一学期あたり」の単位の取得上限を設定されている場合があり、その場合これが通用しない。この上限の規定を「CAP制」という。一つの授業に対して十分なよ復習時間を確保することや、大学四年間にわたって、セメスター(一年の半分)で取る授業数を安定化させることなどが目的だが、CAP制の上限は学科等によって異なるので、意識しておく必要がある。
とはいっても、ここまでのことは概論であって、現実には異なることがある。現に私のいた東京大学の理学部物理学科に関していうと前期教養(1、2年)を出るのに76単位(当時)を取得する必要があった上、物理学科に進学するときに「四学期科目」(二年生の冬学期)に教養とも学部とも別枠の20単位を、さらに学部の3,4年生で60単位を取得しろという規定があるため、156単位ないと卒業できないし、私に関していうと前期教養で94単位、4学期科目と学科で92.5単位と合計186.5単位取得している。
つまり、大学の制度を知らないと予定していたライフスタイルに合わないということが平然とあるわけだ。逆に制度がわかるとどれくらいの時間割を作っていけば良いのかがわかるのでライフスタイルも想像しやすい。
こちらについては「各大学の名前 卒業要件」などとググれば一応資料が出てくる。
その資料がぱっと見で理解できるかはわからないが、大学に入る前からどういう概念があって、どういう生活をすればいいかをわかるようにしておく方が大学選びでいいにちがいない。非常に重要な資料と労力だろう。
(2)必修制度、学問分類
大学によっては何年生の何学期のこの授業を取りなさいと細かく指定するケース(必修)、そこまでは指定せずに、この枠からこれだけの単位を取りなさいというケース(選択必修)などがある。
東京大学はこの規定に関して非常に細かい指定がある。
私の辿ってきた教養学部理科一類→理学部物理学科のコースの場合、
教養学部理科一類の必修が
既習外国語:「英語一列」1年次夏冬、「英語2列」1年次夏冬、2年次夏
初習外国語:「一列」「二列」1年次夏冬
数学:「数学I」「数学I演習」「数学II」「数学II演習」1年次夏冬(各演習は1単位科目)
物質科学:「力学」「熱力学」1年次夏、「構造化学」「電磁気学」1年次冬、「物性化学」2年次夏
生命科学:「生命科学」1年次夏
実験:「基礎物理学実験」「基礎化学実験」いずれかが1年次冬、もう一方は2年次夏
保健:「身体運動・健康科学実習」1年次夏冬(1単位科目)
情報:「情報」1年次夏
計50単位
さらに選択必修として
総合科目A~D(文系科目)8単位以上
総合科目E,F(理系科目)8単位以上
ここまでの条件の最低計66単位分が「進学振り分け」に使う点数に割り当てられるのだが、駒場を出ていくにはこれでは飽き足らず
主題科目2単位以上
ここまで68単位以上
しかし、実際に駒場を出ていくにはこの上に
「なんでもいいから8単位以上」
をとらなくてはならない。
しかし、これは実際上1年半で取り切らないと死ぬ。先にチラッと紹介している理学部4学期科目がある。授業名をいちいちあげると面倒だから言わないが、指定された授業名の講義から、つまり、必修が16単位、選択必修が4単位である。
そして、これ、2年生までに取り切らないといけない。ここからがまた地獄の学部生活で
物理学科必修科目:28単位
他32単位について
22単位は指定の科目一覧(全て理学部の講義)から
26単位は理学部の講義から
という規定がある。
とにかく細かい。
(3)教員と講義
カリキュラムを調べるとどういうテーマの講義があるかとか、学科のウェブページを見るとどういう教員がいるか、はわかるにはわかる。
しかし、実際の教員の人となりは大学に入らないとわからないということも多い。
また、大学では教員ごとに授業の質がまるっきり違うというケースも多々ある。それは最終的にはやはり中にいないとわからないこともあるのだが、とはいってもある程度コンセンサスの取れた、「基本的に、大学でこういう専門を学ぶにはどういうことを学べばいいのか?」ということはまああって、そういうところを大学に入る前から気になってほしい。
自学で全部をやるのは無理だが、大学の講義は聞いてすぐになんとかなるということはまずないので自学をせねばならない。そういうときにその自学するテーマを設定する指針としても使える最強アイテムがシラバスである。シラバスとは本来はどういう講義で誰がどんな話をしますか、という一覧のことなのだが、これを見比べると大学間や学部学科間の教育の違いを明らかにできるし、(1)(2)で述べた単位の制度と合わせて非常に重要な資料である。
シラバスは「学内向け」ページにあることも多く、学生でないと取ることができないケースもある。しかし、注意してほしいのは「在学者向けページ」と書かれているだけで在学者でなくても閲覧可能なケースだ。したがって「在学者向けページ」と書いてあっても躊躇せずに入ることが大事である。そもそもグーグル検索で「大学名 シラバス」で調べても出てくるケースが多いので躊躇せずに調べることをお勧めする。あらかじめ授業を知っておいて、どんなことをどう勉強するのかを知っておくことが大学選びにおいても多かれ少なかれ大事である。
東京大学の場合は
http://catalog.he.u-tokyo.ac.jp
にアクセスすれば良い。