相対性理論というと「物理の難しい話」の代表格のようなイメージを持っている人もいるかと思う。あるいは天才アインシュタインの最高の業績という取り方もあるかもしれない。
相対性理論は通常二つの理論の総称である。すなわち
・特殊相対性理論
・一般相対性理論
という1905年の理論と1916年の理論である。
まず、相対性理論が現れた経緯を述べよう。相対性理論が現れた経緯は、電磁気学理論の力学理論との「矛盾」である。もっと正確に述べるためにいくらか補足すると
・力学ではどの慣性系から見ても運動方程式は同じ形である。
という特徴がある。あらゆる慣性系同士はニュートン第一法則によって互いに静止もしくは等速直線運動しているのだが、そこで動いている相手の座標に乗り換えたとしても、方程式自体は座標に依存しない形で扱える。
という前提が、「電磁気学になった途端に崩壊する」というのがまずいとおもわれた点である。マクスウェル方程式およびローレンツ力の式について、力学の知識を交えつつ、慣性系同士を行き来する座標変換を考える。
結果をいうとマクスウェル方程式が同じ形にならないのである。これ自体は何も不自然ではない。代表的な、簡単な例として、電磁波の速度の問題が挙げられる。電磁波というのが伝わっていく時にどういう速度なのかは、普通の座標変換を考えれば、速度は足し算や引き算ができるのだが、電磁波の速度は式上ある速度cなので、特定の座標で計算して得た結果だと解釈しないとおかしい、という話になる。
地球上で電磁気方程式を立てたのだから、地球がその特定の座標であるという立場もあるだろう。しかし、地球が球に近くて公転していて、自転もしている複雑な運動をしているというのは天文学の発達や物理の発達からして自然と受け入れられていた中では、地球全域でいつでもその「特定の座標」になっていると考えるのはあまりに不自然と思われた。そのため、さまざまな実験によってマクスウェル方程式の「ズレ」を検出しようとした。代表例が「マイケルソン・モーレーの実験」である。他にも様々な角度から実験をなされたが、マクスウェル方程式は間違っていなさそうだったのである。
アインシュタインはマクスウェル方程式が常に正しいという前提のもとで、逆に力学、正確には力学の前提部分をそれに整合的なように作り変えるべきだと考えた。マクスウェル方程式に整合的であるためには座標変換の仕方を
・時間や長さはどの座標ではかっても共通で、(原)点の位置が互いに等速直線運動する
というこれまでの前提を変更することにした。といっても上の条件は結構強力なのでこれを分割して次のような指針で攻める。
・「光速度」は常に不変である
・「時間」や「長さ」は別の座標で測ると異なる場合がある
・慣性系同士は互いに特に区別されない
・(慣性系同士の相対運動を除いて)、慣性系において特別な方向はない
これらの文言は意味がわからなかったりするかもしれないが、結果的には「ローレンツ変換」という座標変換であればうまくいくという結論を得る。
それゆえ、相対性理論と一言いうと、だいたいの場面でローレンツ変換の特性が常々クローズアップされるが、ローレンツ変換は単に座標変換に過ぎない。それそのものは相対性理論ではなくて、数学のお話である。
ローレンツ変換は実はもっと簡単に導出する原理がある。それを理解するにはこれまでの座標変換を考えるとわかるのだが、これまでの座標変換では「時間」と「長さ」は
「どの座標上の点から測っても」「回転させた別の座標で測っても」同じであるのは多分常識的な感覚だろう。実を言うと「三平方の定理」はこれらの条件と密接に関わっている。というのも数学的に
「三平方の定理を満たすような意味での長さが不変になるような、座標の連続的変換」として平行移動、回転を導くことができると言う知識がある。ローレンツ変換についても同様の立場すなわち
「ある定理を満たすような意味での長さが不変になるような、座標の連続的変換」として導出できないかというと、実は容易にできて、
-(cdt)^2+(dl)^2
を不変にする、ただし、cを光速度、dtを時間、dlを長さとする。三平方の定理を時間の方向だけcかけてさらにマイナスをとって足せという立場だ。これを使って計算するとローレンツ変換は容易に出てきてしまう。
この「長さ」のことを世界線長さというが、世界線長さを不変にする変換としてローレンツ変換を定義するのが楽で、ここでの考え方は一般相対性理論における「一般座標変換」でも非常に根幹的な考え方になる。
今回はここまでにしておこう。