交通という分野は民間の機動性を活かしつつ、公共性を持ったことにも配慮されるべき存在、というのが恐らくこの日本における整備の仕方のベースの考え方だろう。

 

しかし、その両面性について果たしてうまく認識を持って整備が進められているかについては甚だ疑問と言わざるをえない。

 

交通インフラは何かしらの側面で固定的なものである。

道路にせよ、鉄道にせよ、空港にせよ、一度整備したら数十年単位では固定的なものである。

 

道路というインフラは設置場所は固定的だが、その上を動く利用者はバスのような集約をしない限りは個別離散的に勝手に動くのでインフラ整備で問題が起こるのは道路本体を整備する段階だけで、その上を動かすソフトウェア部分はせいぜいバスやトラック等を利用した一部の民間のサービス部門を除けばあまり考えることもないよくいえば開かれた、自由なインフラであり、と同時に、悪く言えば無責任なインフラなのであろう。よほど流動需要とそれに対する線形の不良があっても一概に文句を言えないし、また自動車という道具がその線形不良を一定程度カバーしてしまう。

 

鉄道は路線を引っ張るだけではダメである。路線の上を誰が走るのか(通常は一つの会社の車両が走るが、乗り入れであったり、そもそも論としては「第二種鉄道事業者」という形でそのインフラ本体の整備の責任を持たず、ただ乗っかって利用するだけの鉄道事業者も法的には認められている。)また、どういう形態で運用するのか(乗り入れ先や系統分割など)といった面が全て利用者が実際に利用するまでの間に利用者にとっては上から決められるスタイルなのである。つまり、流動の体系の整備がまた重要性を持つインフラなのである。もっとも、流動の体系と線形等が合致しない場合機能しなくなるので、整備する場合には流動の体系をあらかじめある程度念頭に入れなくてはならない。全国の閑散としたローカル線の中には地方の流動性を正しく取り込めていないが故に閑散としているケースは少なくない(例:真岡鉄道、JR三江線...)

 

航空はどうか。航空の場合には実際にはいろいろ問題はあるのだが、インフラ整備者は単に空港だけ作って、むしろ路線を提供する航空会社が割と好き勝手にどの空港の間で路線を敷くかを自由気ままにできるという、航空会社が大きな責任を持つようなものである。

 

このように交通インフラは運営と設置の面から言っても特性が違う。

道路は自由で無責任なもので整備する側からすれば確実に有り難がられる

一方で集約性の観点からは決していいものではない。自動車は大きく面積を取る割りに人や貨物が乗らない。

それは「車間距離」という側面も併せて考えると本当に大きな問題になる。

 

鉄道はこれに対しては非常に優秀である。東京と大阪を結ぶ高速道路は東名と新東名、名神と新名神、ともに片側2車線以上、したがって常時片側4車線が確保されているが、新幹線は複線。「片側一車線」なのである。

東海道本線と合わせてもこちらも東京や大阪側で複々線区間があるが、基本複線。

 

いずれにせよ、インフラというのは性質が違うのである。性質の違いがありつつ、すべて淘汰されていないのは、他で補えないから淘汰されていないのである。

 

都市を発展させていこうと思うとこうしたインフラはベースになる。利用者心理も合わせて、インフラをどう構築すると都市が分断されずに健全な発展ができるのか、ということをおそらく考えるべきである。

特に既成市街地が寂れるという問題については、既成市街地が構造的に道路に弱い点を念頭に置かなくてはならない。既成市街地のようなところでも整備をしやすいのが鉄道なのである。だからこそ鉄道はどこにいってもかなりの割合で既成市街地を通っている。しかし、道路は車という一定程度離れていても自由に動ける道具を載せているため、少し離れた辺鄙な場所を通す。今度はそこを開発することでそこに都市機能が一部持っていかれる、こういう構造があるのである。

 

とはいえ、道路は完全ではない。だから鉄道が残っているのである。また、航空があるのである。

 

地域を発展させるには交通の結節点としての機能を担保しなくてはならない。既存の市街地がその観点で問題を持ってしまった時にその機能が削がれてしまうとひどいことになる。新市街地を整備する時には本来であれば鉄道がある場所を選ぶか、または鉄道を移転させて駅を作るなどして、さらに道路を整備するということが本来的には求められるだろう。

 

ところでそういうことをすると鉄道の線形が悪くなる恐れがある。また停車駅が増えて機能性が下がる懸念もある。かといって駅だけ市街地から離れるというのはいいことではない。支線によって補うというのも結局は鉄道の不便な地域の生成になってしまう。やはり新市街地への移転によって問題を解決するというのはあまりいいことではないだろう。

 

最近思うのは空港は実は都市の模範なのではないかという点である。空港の商業施設の売り上げはかなり大きい。幹線道路にインターチェンジを設けて、市街地間近に巨大な駐車場を整備し、既成市街地を巨大な「空港商業施設」のようなものと見立てて、駐機場、滑走路を鉄道駅とみなす対応である。

 

 

だとしてたとえばつくば駅はそれができているかというと...