高校物理はだいたい大学以降の物理の一部応用より、古典より、小規模版とでも思っておけばいいとして
必要かどうかはともかく。どちらでもいいです。

大学で物理関連のカリキュラム、自分の履修したものを思い出せば
1年夏:力学、熱力学
1年冬:電磁気学、基礎物理学実験
2年冬:解析力学、量子力学I、物理数学I,II、電磁気学I、物理実験学、物理学演習I,II
3年夏:電磁気学II、量子力学II、統計力学I、物理学実験I、物理学演習III,IV、流体力学、現代物理実験学I
3年冬:電磁気学III、量子力学III、統計力学II、物理学実験II、物理学ゼミナール、物理学演習V,VI、物理数学III、現代物理実験学II、固体物理学I、生物物理学
4年夏:一般相対論、場の量子論I、サブアトミック物理学、統計力学特論、プラズマ物理学、特別実験
4年冬:場の量子論II、素粒子物理学、理論演習

とまあ、学科に入ってからのは特にIとかIIとかいう学科内の任意性が効いた名前が付いていて何やってるのかわかりにくいでしょうが、

1年夏の力学
ニュートン力学の枠組みを微積分によってまとめておいて、ニュートン力学の枠内で基本的な物理概念をとりあえず揃えておいて、ある程度計算できるようにしておけばいいって程のもの。
熱力学
熱力学関数を導入し、それが持つべき性質を基本的な熱力学法則を公理にして要請しておき、その要請によってもたされた性質から具体的に物質の性質などを熱力学関数から引き出す技術がある、という程のもの。
1年冬の電磁気学
電場、磁場、電荷電流の存在をとりあえず認めるというか、その持つ性質を認めた上で、マクスウェル方程式を比較的容易に示されるか法則あるいはおけそうな公理から導いて、微分型マクスウェル方程式を導出しつつ、それを作るために使ってきた程度の数学とその練習
解析力学
ラグランジュ形式、ハミルトン形式の導入や、それを用いた議論、技術的な手法など
量子力学I
状態概念とボルンの確率解釈、波動関数の導入、シュレディンガー方程式の初等的な計算
物理数学I
主に複素解析
物理数学II
主に特殊関数
電磁気学I
特殊相対性理論を扱えるようにした上で、1年冬の電磁気学に出てくるような基本法則を使って電磁場とそのローレンツ変換を現象的に見て電場のローレンツ変換から磁場が現れるといったことや、回路の取り扱いなどを見る。
物理実験学
実験にまつわるテーマとして単位、誤差評価、冷却法などを扱う。以降の「実験学」系の講義も基本は同じ。もちろんそれぞれの中身でどこを重点的に扱うかは、異なる。
電磁気学II
物質内部の電磁気学や、マクスウェル方程式の様々な条件での求解。ただし、この段階ではソース項すなわち電荷や電流、特に電流タームを考えず、従って、電磁波の放射現象はあまり扱わない。
量子力学II
角運動量の扱いや、電磁場を場の量子論の枠組みを導入する前段階で扱うところなどを主にやっていた気がする。
統計力学I
等重率の原理を置いてミクロカノニカル分布、そこから熱浴を置くことでカノニカル分布など分布を扱う議論と、分布から熱力学関数を導く議論(ということはここで理論モデルから1年夏の熱力学に戻って現実的な物理的特徴を引き出せるよね...という話)を主にしていた。
物理学実験I
毎週ほぼ違う様々な実験をしていた
流体力学
連続体特有の事情による初歩的な概念からやはり流体特有の「運動方程式」などを導きつつ、電磁気学等で使う数学の結果を元に結局は例えば「速度ポテンシャル」などを使って完全流体(粘性のない流体)は議論できるということから、実在流体の議論も一部で進めた。
電磁気学III
例えば電荷が加速度的に運動すると放射するように、マクスウェル方程式にソースタームを加えて放射の議論を行った。もちろんここでは相対論に基づいた議論をしないとただしい「加速」などが扱えない(ということは普通に「放射」の現象を扱うにも相対論あるいはそれに相当する枠組みがなければいけないわけで反相対論がいかにゴミ屑か、ということですね)
量子力学III
散乱理論、多粒子系の扱い(並びにそれを実現する上で重要な第二量子化)の扱いなど
統計力学II
相転移、臨界現象などの統計力学や、線形応答理論など非平衡へ拡張した議論
物理学実験II
原子核散乱、磁気共鳴、相転移、パルス技術(ミュー粒子の崩壊観測)
物理数学III
群論、微分形式など


まあ、後のものは人によって履修形態が違いそうだし、とりあえずここで切り上げるとして、
カリキュラムはだいたい「歴史」に沿った順序で出来上がっています。それが合理的かどうかはともかくとして。

実験がより細かったり、より大きな枠組みについて議論をするのは相当に大変で、理論はある程度限られた限界のところで「公理」をおきます。その中で、成功したものはどんどんと応用されていく都合、その後公理の置き方を大いに変更した形式が出てきて、こちらの方が合理的だからといって、必ずしも、それを優先的に扱うカリキュラムにはなっていないというのが実情でしょうか。

その点でランダウはかなり革新的だったのでしょう。ランダウの力学と場の古典論は最小作用原理から始まっていますから。しかし、その後の編はまだ研究途上ということもあって、最小作用原理のより高級版とでも言える経路積分形式から、というわけでもないのです。

その意味で、ランダウのテキストの抜本的な変更を時代はそろそろ作ってもいいのではないだろうか。
もっとも、それだけ広範囲を教科書かけるだけ理解することがより難しくなってきてはいるのでしょうが。

さて、学習者がどう勉強するべきか、というのは人によって違うでしょうが、私の場合、ある程度ストーリーというか、そういうものができてきた時、そして、そのストーリーとより個別の勉強するテーマが結びついた時、モチベーションを感じるので、ある程度ストーリーを作ってあげるというのが大事だな、と思いまして、

とは言っても、もう上に書いたカリキュラム自体がある程度はストーリー仕立てなのですが、そこら辺をもうちょっと次の記事で紹介したいと思います。