大学院生としての生活が近づく中の学習のメモの予定のブログですが、本当に進捗を生み出せないで大変。場の量子論だったりそれにまつわるリー群論だったり、一般相対論だったり、どうもまだしっくりとこず、言葉にもできないのである。

で、久しぶりの記事はブロックと調和級数。

同じ重さのブロックをせり出すように重ねた時、うえにあるブロックをどこまでせり出させることができるか、また、これを重ねていくことで元のブロックに対してどこまでせり出させることができるか、という超初歩的な高校物理のお話。

詳しくは
http://sky.geocities.jp/bunkyo_kagaku/text.html
で計算したように調和級数となる。

ノートにまとめてある点についてはたとえば、②あたりの条件はゴールドスタインの力学では作用反作用の弱法則と強法則の二つに分けてまとめてある。より丁寧なのでそちらを参照していただきたい。

また、調和級数や運動方程式の立て方などはそれぞれ高校なり大学教養程度の数学をそこそこやれば普通に分かることであるから、ここで取り上げることもないだろうか。

などと言ってたら全部取り上げることでもないが、少しばかり、「静止条件」がなぜ2つあるのかをちゃんと考えたい。

というのも、重心の静止条件、というのと、回転のない状態という2つの要素はいわば「発見的」で「帰納的」に感じる人も多いのではないか。私は、そういう話をされるとそう感じてしまう。

帰納的である限り、「十分性」は言えない。今から十分性を示していく。といってもゴールドスタイン様様な記述だが。

まず、今から考えるのは「剛体」とよばれる、変形しない物体の力学だ。
変形しないというのは
「任意の二点間の距離が常に一定になる」
というように通常定義される。こう定義するだけで「形状の変化」が不可能になることは次のように考えれば良い。
剛体中から代表的な点を選ぶと、その点同士を結んだ線を使って三角形を構築し、それによって点の相互間の関係を尽くすことができる。そのため、代表的に三点を選んで三角形を考える。
このとき、三角形の辺の長さは剛体の条件により、剛体に加えられるあらゆる変化の元で一定値を取る。すなわち、三角形の合同条件を満たし、その形状は常に一定である。

三角形の取り方をどのようにしても形状が常に一定であり、したがって、どのような点同士の相互関係を取っても、変化しない。素朴な意味での形状の変化、はたとえば角度の不変性なども伴うだろうが、そういうものも、実は任意の2点間の距離の条件から導くことができる。

さて、そのような条件であるから、剛体もしくはそれと一緒になって動く剛体外の点を基準に選びとって、あとはその点との距離によって位置を指定する「座標」を考えることができる。そのときの基準になる点はいくつ必要か、というと、3つである。

正確には空間座標の次元の数だけ必要になる。理由は簡単で、空間座標の次元の数というのは、位置を特定に必要なパラメータの数であり、その数だけ独立な方程式が必要になる。一方で、基準となる点からの距離を示せば、それが独立した方程式をなす。したがって、空間座標の次元の数だけ、基準点が必要になる。

ただし、剛体というのは、基準となる点からの距離が常に一定値を指し示すもので、この座標系を使えば、任意の剛体中の点は初期値が決まればあとは自明(座標系の動きに応じた動きをする)なので、剛体の運動を決定付けるのはじつは剛体を特徴付ける基準となる点3つについての自由度である。

点3つの位置はそれぞれに3つの位置座標を要するため、9つ自由度があるが、剛体条件はこの3点同士にも制限を与える。3つの間から2点を選ぶ自由度は3C2で3つ。したがって9-3=6の自由度になる。

静止条件は重心の座標位置に対する方程式ということでそのベクトル的な自由度より、3つの方程式をつくる。また、回転についても、3次元的には3自由度(オイラーの回転)を与えており、それらは独立であるため、あわせて6自由度になる。

したがって、6である。

ただし、今回の問題は2次元問題ではないか、という批判が飛んできそうだ。実際、奥行き方向は全く考えていないし、回転も二次元平面中の回転条件しか使っていない。

二次元の場合は必要な条件は3になる。なぜなら、2つの点が必要で、それぞれ2つの自由度を持つが、相対距離条件から1つの自由度が消える。したがって、3自由度だ。

重心位置は2自由度、回転は1自由度だ。したがって、ちゃんと3自由度を与えている。

こう考えるとN次元の問題についても考えることができるように思われる。まず全条件数はN^2-N(N-1)/2=N(N+1)/2である。重心位置の自由度はNだ。

回転の自由度はいくつだろうか。回転行列の性質を考えれば良い。まず、全要素数はN^2だが、ユニタリー性を使うとN本のベクトルから2個を選ぶ組み合わせと、自分自身との内積条件を与える。前者はN(N-1)/2、後者はN個の条件を与える。その条件から残る自由度はN(N-1)/2となり、重心位置の自由度を足すとN(N+1)/2となるので、やっぱり合致する。

任意の次元において、回転と並進運動の自由度が、剛体の自由度を尽くしている。