習近平政権は「戦狼外交」を大転換したのか? 【澁谷司──中国包囲網の現在地】
https://the-liberty.com/article/20988/
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> 「戦狼外交」の転換か、はたまた一時的なものに過ぎないのか──
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> 10月9日午後、習近平・中国国家主席は北京の人民大会堂でシューマー米上院院内総務率いる上院超党派代表団と会談した(*1)
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> ◎スパイ気球問題で関係緊張したが……
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> 振り返れば今年2月、中国スパイ気球が米上空を通過し、米中関係が緊張した。本来ならば、その頃、ブリンケン国務長官が訪中する予定だったが、キャンセルされている。結局、6月にブリンケン長官は訪中したが、その際、米中代表らをまるで中国歴代皇帝が見下ろすかのように、習近平主席が真ん中の席に座っていたのが印象的だった(*2)。
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> 今回の米上院議員らによる訪問は、次の「バイデン・習近平会談」への道を切り拓くものだと見られている(*3)。代表団が中国に到着した(現地時間)7日、ジョー・バイデン米大統領は、11月にサンフランシスコで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で習主席と会談することは「可能」だが、まだ最終決定には至っていないと述べた。
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> 今度の代表団はシューマー院内総務を筆頭に、共和党3名、民主党3名の構成で (*3)、2019年以来、4年ぶりの米議員の訪中となった。米中は台湾問題、貿易問題、人権問題等で関係悪化したが、それを修復する意図がある。
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> ◎習氏は「トゥキディデスの罠」は回避可能と"秋波"?
> その中で、習主席は代表団に次のように語り、"友好"の意を示した。
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> 「『トゥキディデスの罠』(引用者注:従来の覇権国家と台頭する新興国家が、戦争が不可避な状態にまで衝突する現象)は回避できないものではない」
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> 「この広い地球は、中国と米国がそれぞれの発展と共通の繁栄を享受するのを十分受け容れられる。世界的なコロナ流行からの回復、気候変動への対応、国際的・地域的なホットスポット問題の解決には、すべて中米間の協調と協力が必要である」
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> 「また、中国の過去、現在、未来をよりよく理解するために、より多くの米連邦議員が訪中することを歓迎する」
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> 一方、米国側は互恵関係の欠如を指摘した上で、中国にある米国企業が公正な競争環境を必要とすることに関心を示した。また、中国側にフェンタニル(引用者注:fentanyl=鎮痛剤として使用される強力な合成オピオイド<ケシから採取されるアルカロイドや、そこから合成された化合物>)製造用化学品の輸出を防ぐための措置を取ることを促した。
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> ◎米国側の要望を驚くほどすんなり受け入れた中国
> また10月7日、シューマー院内総務は王毅外相に対し、中国外交部がイスラエルへの攻撃を強く非難しなかったことへの失望を表明し、中国がハマスの残忍な行動を明確かつ強く非難するよう要請した(*4)。
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> すると、中国はシューマーの要求を受け入れ、2日後の9日、中国外交部の毛寧報道官は、イスラエル民間人の犠牲者を「非常に悲しく思う」と繰り返し、民間人を傷つける行為に対し「反対と非難」を表明したのである(ただし、ハマスへの直接の非難は避けた)。
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> 今まで「戦狼外交」を展開してきた中国側が米国の要請をこれほどすんなり受け入れるとは驚くべき変身ではないか。4ヶ月前のブリンケン訪中時とは、状況が一変した。
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> そもそも外交部が文章を変えることは難しいはずである(*5)。中国が米中関係改善に力を入れているということだとも解釈できよう。ひょっとして、これまでの「戦狼外交」からトウ小平が推進してきた「韜光養晦」(能ある鷹は爪を隠す戦略)への転換を意味しているのか。それとも、あくまでも一時的な戦略変更なのだろうか。
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> 現在、中国では、しばしば外国人ビジネスマンの出国が禁止されている(*6)。そのため、海外の外国人ビジネスマンはビジネスのために中国に行くことを恐れているという。これでは、外資が逃避するのも無理はないだろう。
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> このまま手をこまねいていては、中国経済はますます落ち込むだけである。習政権としても、何らかの手を打たねばならない。そこで、米国と"和解"することで対中経済封鎖を解いてもらい、貿易を拡大する方向へ舵を切ったのかもしれない。
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> (*1)2023年10月9日付『中華人民共和国外交部』
> (*2)2023年6月22日『BBC News中文』
> (*3)2023年10月10日付『DW』
> (*4)2023年10月10日付『美国之音』
> (*5)2023年10月11日付『万維ビデオ』
> (*6)2023年10月14日付『万維ビデオ』
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> アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師
> 澁谷 司
> (しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
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> 【関連動画】
> 澁谷司の中国カフェ(YouTube)
https://bit.ly/3FhWU43
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