幸福実現党党首 釈量子

(5月29日収録)

https://youtu.be/–Sop9A8fwU
 

 

◆日本経済復活の切り札

前回は、トランプ政権の「対中制裁」について取り上げました。

コロナに続いて、香港情勢でも5月29日に対中制裁を発動しました。注目したいのは、アメリカは大統領と議会が中国の覇権の暴走を止めるために一丸となっていることです。

日本の安倍政権も、中国とアメリカを「両天秤」にかけるような外交をやめて、「脱中国」の路線を明確に打ち出すべきではないでしょうか。

そこで今回は、「脱中国」の具体策としての「国内回帰」についてお話します。「中国にある工場などの生産拠点を日本国内に戻す」ということです。

これは、アメリカと歩調を合わせた「対中制裁」と、さらにはアフターコロナの「日本経済復活の切り札」にもなります。
◆第一次補正、国内回帰予算について

日本は「コロナ」で中国依存の怖さを思い知りました。2月ごろから、都市封鎖や渡航制限の措置により、中国から部品が入らず、工場の生産が止まりました。

政府も、脆弱だったサプライチェーンを強靭化しようということで、4月末「令和2年度補正予算」で対策を打ちました。

まず、サプライチェーン対策のための「国内投資促進事業費補助金」です。

これは「特定国」で生産していた製品の工場を、日本に移す時の補助金で2200億円を5月22日から7月22日まで公募します。「特定国」といっても、当然、中国を念頭においたものです。

二つ目の「海外SC多元化等支援事業」は、「チャイナプラスワン」と言われていますが、中国の工場をASEAN諸国に分散させたりすることを想定しています。公募は5月26日から6月15日までです。
◆「痛いところを突かれた」中国

これに敏感に反応したのは、中国共産党です。

中国版スマートニュースToutiaoは、日本企業が撤退したら、広東地区だけでも「電子工場の3分の2が倒産するだろう」と報じています。

そして、「中国から日本やASEANへ工場を移転させることは非現実的だ」「中国自体が重要な市場だ」と環球時報などで主張を広げ火消しに走りました。

中国の1月から3月のGDPは前年同期比6.8%減と急落し(中国国家統計局発表)、この数字も粉飾かもしれませんが、先日開催された全人代では経済成長の目標も打ち出しができませんでした。

日本の「国内回帰」路線は、習近平政権の「一番痛いところ」突き、アメリカと歩調を合わせる上でもっとも重要な戦略の一つといえます。
◆企業の「中国撤退」を促すアメリカと台湾の事例

そこで見てみたいのが、戦略的に自国企業の中国からの国内回帰を進めているアメリカのトランプ政権と台湾の蔡英文政権の政策です。

まず、トランプ政権は、「アメリカ・ファースト」を合言葉に、中国からの輸入品への関税を高くして、メイド・イン・チャイナの地位を下げました。

最近、アップルも中国からインドやベトナムでの生産に大きく転換しようとしています。

さらに、国家経済会議(NEC)のクドロー委員長が「国外から移転してきた企業の法人税を半分の21%から10.5%に下げる」と発言し、「移転費用を100%補てんする」など、不退転の決意を表しています。

次に、台湾の蔡英文政権の国内回帰(投資台湾三大方案)です。

前政権で中国依存率が高まったことを問題視し、第一期で脱中国依存の路線を進めました。

その一環として、中国に進出した台湾企業の国内回帰を促す「台商回台投資方案」「根留台湾企業加速投資行動方案」「中小企業加速投資行動方案」の3セットで、大企業と中小企業も含めて台湾回帰の投資を進めています。

具体的には、台湾に戻ってくる投資案件には、2019年1月から3年間限定で、銀行手数料の補助や、外国人労働者に関する労働規制を緩和すること(これは「移民政策」)などです。

開始から1年半、480社、1兆36億台湾元(=約3.6兆円)の台湾回帰投資が行われ、8万人以上の雇用が生まれました。
◆両天秤外交からの離脱

では、日本はどうすればよいのでしょうか。

まず、政治の明確な意思表示が必要です。ずばり、「米中両天秤外交からの離脱」です。

安倍首相が5月25日、海外メディアの記者から「アメリカと中国、日本はどっち側につくか」との質問をされました。

これに対して、安倍首相は「米国と協力をしながら、様々な国際的な課題に取り組んでいきたいと考えています」と表明しています。

それならば、習近平国家主席を国賓待遇で招待しようとする動きは白紙に戻し、国家としてどういう価値観を選ぶか、示さなければならないと思います。
 

 

◆日本経済を復活させる政策

(1)国内回帰を促す大胆な推進プランを!

まず、中国にある日本の工場が国内回帰したくなるような政策を総動員して、産業構造をイノベーションし、企業への「優遇税制」など大胆な推進プランで、日本に帰ってきやすい環境を整えるべきです。

前編で述べた「コロナ関連予算」では、日本回帰の補助金の額も小さく、公募期間はわずか2カ月と、小出しです。

例えばトランプ政権が行った設備投資全額控除の「即時償却」や、法人税や固定資産税の減免も取り入れてはどうでしょうか。

また、台湾の蔡英文政権が行ったように、移転に伴う融資への金利や手数料への補助を3年から7年くらい行うことも必要だと思います。

スピード感を求めるなら、中国からの輸入品への関税を上げることぐらいの気概があってもいいのではないでしょうか。

移転費用を政府が補てんすることも考えていいと思います。

単なる立地補助金で終わらないよう、減税、金利手数料の優遇、移転費用の負担も含めて、「国内回帰」を全面的に支援することです。

(2)「中国の不当な産業補助金を止めさせる」

次に「中国の不当な産業補助金を止めさせる」ことです。アメリカや欧州と協力し、国際社会から中国にプレッシャーを与える必要もあります。

産業補助金はどこの国でもやっているのですが、中国の場合はケタがまったく違い、市場の公正な競争を大きく歪めています。

中国の上場企業に対して、中国政府と地方自治体が出す産業補助金は10年で4倍です。

17年の中国の政府補助金は1350億元(2兆1000万円)。4割は「中国製造2025」関連補助金で、半導体メーカーは大躍進し、アメリカの軍事技術を脅かすまでになりました。

世界貿易機関(WTO)にいわゆる「補助金協定」がありますが、GDP世界第2位でありながら、未だに「開発途上国」として優遇措置の対象にもなっていることはおかしいという声をあげるべきです。

(3)「国内需要の創出のための消費減税と未来投資」

さらに、中国に進出した日本企業が国内回帰に二の足を踏む理由として、「日本は消費税が上がったし、電気代も高い」という声をよく聴きます。

日本国内の需要を喚起するために最も有効なことは、消費減税です。GDPの6割の国内消費を喚起し、ビジネスチャンスを増やすことです。

もう一つは、未来に富や雇用を生む産業へ大胆な投資をすることです。

コロナで目先の暮らしのための大盤ふるまいよりも賢いお金の使い方は、宇宙産業、次世代の交通手段、国防産業、食料やエネルギーの自給率を高めるための研究開発に投資することです。

アメリカのIT企業や航空宇宙産業など、新産業の多くは、政府機関や軍事研究分野から出てきています。

家電や自動車の生産拠点を中国と取り合うだけでなく、日本にある技術の種から高付加価値の産業を育てられるとなれば、日本への資本還流も起こります。

(4)「親日の外国人労働者の議論開始」

「親日国からの移民や外国人労働者の受け入れ」を議論すべきです。

台湾は国内回帰とともに移民政策を進めましたが、台湾のように中国と距離を置くことが大前提になると思います。

現在、技能実習生や留学生を受け入れていますが、必ずしも友好国のみから受け入れているわけではありません。

中国共産党は2010年、国防動員法を施行しており、有事となれば、中国人が日本国内で蜂起することもあり得ます。私たちは、中国からの受け入れ拡大は反対です。

日本と安全保障での協力関係を構築しているような親日友好国で日本を愛し、日本人になりたいという方には、日本語の習得や、国を守る意識などを条件にして、積極的に人財を受け入れてもいいと思います。

◆日本は、世界をけん引できるビジョンを描け

コロナを機に、全世界で、グローバリズムの見直しは避けられません。

アメリカも日本も、グローバリズムで国内産業が壊滅され、人件費の安い中国などに流れ、国内に税金を払わない企業が栄え、国内の雇用が失われていきました。

「コロナ」は、ポストグローバリズムの経済を推し進めるチャンスと捉えるべきです。「コロナ不況対策」、「地方創生」、そして「中国の覇権主義へのけん制」という「一石三鳥」です。

米中を両天秤にかけ、中国を忖度する政治をやめ、「自由民主信仰」に基づいた政治で国家の方向性を明確にし、米中でアフターコロナの世界をけん引できるようなビジョンを描くべきだと思います。
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