身体が

おも…い

 

動けねぇ

 

なんでだ?

金縛り?

 

顔だけは動かせる…

 

恐々と横を見ると

 

なんだ

 

その重みの原因は

 

ももが胸元に腕を回して

しがみつくようにして眠っている

 

寝顔…

 

ここに来た時以来だな

 

口が薄く開いて寝息が聞こえる

 

熟睡だな

てか…おれもすげぇよく寝れた

 

誰かと一緒に寝るなんて

想像できなかったけど

 

悪くない

 

近くで見るとやっぱり睫毛長いな…

 

…泣いたのか?

 

下睫毛さえ長くて

それが水滴を含んで重たそうだ

 

白い頬にも涙の痕跡が

 

それをなぞると

んっん…ってくぐもった声を洩らす

 

「もも…?」

 

起きねぇな

流石に体動かしたいぞ

 

「もも…」


ふと


つぅと新しい水滴が生まれ

鼻筋を通って流れ落ちた

 

「…もも…起きろ」

 

「えっ…」

「やっと起きた」

 

「さと…?…おは…よ」

「うん…おはよう」

 

「どうした?」

「ん?」

 

「泣いてた」

 

え?と驚いた顔をして

自分の頬を触ると

 

真新しい涙の跡に

また驚いている

 

「あ…ほんとだ…」

 

「怖い夢でも見たのか?」

「…ゆめ…」

 

ゆっくりと身体を起こすから

急に半身が軽くなって


俺も身体を起こした

 

「最近見なくなったんだけどな…」

 

それは独り言の様だった

 

「すごく幸せな夢…」

「幸せな夢?」

 

それでなんで泣く?

 

「うん…起きると忘れてしまうけど…なんかね…幸せな夢を見ていた気がするんだ…」

 

その声にどう反応すればいいのか

考えあぐねていると

 

「さとし…ありがと」

 

ももは

よく『ありがとう』を伝えてくれる

 

今もまた

 

すっかり覚醒してすっきりした顔した

もものくれた

このありがとうの意味が分からない

 

「なにが?」

 

「久しぶりに熟睡した感じがする」

「今まで寝れてなかった?」

 

「…寝れてないことはないんだけど…」
 

「けど?」

「少し前…苦しくて目が覚めたら夢を見て泣いてる事に気がついて…夢を見るのが怖くなったら寝るのも怖くなった…んだよね…」

 

「今みたいに?」

「うん…でも今日は今までの夢と違う気がする…」

 

「きっとさとしが守ってくれたんだね」

「俺はヒーローかっ」

 

照れくさくって

額を小突くと

 

「ふふっそうかも」

 

嬉しそうに笑っている

 

「よし…起きよっか」

「うん」

 

「味噌汁作って」

「ふふっおっけぇ」

 

どちらともなく

手を繋いで

 

ベットから降りた

 

新しい朝の始まりだ