もう来てると思ったのに

そこにいたのはじゅんではない見慣れた顏だ


俺を見つけると

壁に凭れかかっていた体を起こした


『じゅんくん今トイレ行ってるよ』

『そっか』


やっぱり俺よか先に来てたんだ…


『しょうさんが来たなら俺帰るわ』

『え…おい』


『ん?』


何で逃げるように帰るんだ?

どうしてここに?


聞きたいことがあって呼び止めたのに

何も言わない俺を笑って


『姫を守るナイトは一人いれば充分でしょ?』

『姫って…』


『じゅんくん今日すごく楽しみにしてたよ』

『そっか…』


そうなんだ…

そう思ってくれているのなら誘ってよかったな


『で?誕生日ケーキ買ってあげるんだって?』

『そんなことまで喋ってんの?』

まぁね…
ふふっと得意げに笑う

最近はあの仏頂面は影を潜め
こうして笑顔を見せる事の方が多くなった

『俺たちには秘密はないんで』

ほんと…
仲がいいな

『そうだ…じゅんが欲しがってるのない?』
『…なんで?』

事の経緯を話すと

『じゅんくんらしいね』
って優しく微笑んだ

『だからサプライズで…さ…』
『しょうさん…』

『ん?』

『ケーキがいいって言ったんでしょ?』
『あぁ…』

『じゃあそれだけでいいと思う』
『でも…』

『物じゃないんだよ…あなたがお祝いしてくれるのが一番のプレゼントになるんじゃない?』

『…えっ』

大人びた顔して
意味深なことを言う

そんな話をしているうちに
人混みにもまれながらじゅんが向かってきた

『ごめ…っしょうくんっ』

『待たせたか?』
『うううんっまたせられてないっ』

『『ふははは』』

『…じゅんくん日本語変になってるよ?』
『え?え?うそっ』

『楽しみで早く着いちゃったんだよね?』
『にのっ』

心なしか色ついた耳のじゅんとじゃれ合う様は
可愛らしいものだった


『ほら楽しんでおいで』
『…うん…いっしょにまっててくれてありがと』

『どういたしまして』

『しょうさん…じゅんくんの事お願いね?』
『あぁ…ちゃんと家まで送るから』

小さくなる背中を見送って

『じゃ…いこっか?』
『うん…』

俺たちは歩き始めた