翔side

 

くぅと気持ちよさそうに寝息をたてるじゅんの横で数分を過ごしそろそろ湯もたまった頃だと

 

「じゅん…」

 

「じゅん…?」

 

耳元で囁いても

擽ったそうに身体を捩って


胸元に顔を隠してしまう

 

そんなに眠たいなら

このまま寝かせてあげたいけど

 

…楽しみにしてたから

 

 

一度この部屋を出る前

トイレを済ませたじゅんが慌てた様子で出てきた

 

『しょうくんっ』

『どうした?』

 

なにがあったのか尋ねると

 

『あのねっジャグジーついてるっ』

『ふははっそっか』

 

すごいねって目を輝かせて教えてくれた

 

『おれジャグジー初めて…』

『おれもだよ』

 

じゅんの【初めて】を

俺はたくさん見てきた

 

その多くは俺の【初めて】でもある

 

こんな小さな【初めて】を喜んで

子供みたいにはしゃいでる

 

『寝る前にはいろうっと』

『一緒に入るか?』

 

『あ…え…』

『ふっ冗談だよ』

 

「じゅん?ジャグジー…入るんだろ?」

「…ん…はいる」

 

ふははっ

目開いてないけど返事だけが返ってきた

 

「ったく…」

 

寝起きが悪いのはいつもの事

まぁ…さっき疲れさせちゃったしな

 

「明日の朝にする?」

「やだ」

 

妥協策をあっさりと却下して

ゆっくりと目を開けた

 

「起こしてくれてありがと…」

「ふふっどういたしまして」

 

「ローブ持ってきたからこれ着て?」

「うん…」

 

もぞもぞと着込んで

ベットから降りた

 

「ゆっくりはいっておいで」

「うん」

 

真っ白いふわふわなバスローブを身にまとい

過行く後ろ姿に

 

そっと息をつくと

 

「いっしょにはいる?」

 

持ってたスマホを落としそうになった

 

「は?」

 

「ふふっそんなにおどろく?」

「だってお前…」


そりゃ驚くだろって


「だってさ…しょうくんもジャグジー初めてだって言ってたし…俺のあとだともっと寝るの遅くなっちゃうし…それに…」

「あぁ…あぁわかった」

 

いくつもの理由を並べる

思ってもいなかったじゅんの誘いに

 

俺の返事は一つ

 

「一緒に入ろ?」

「ふふっうん」

 

「でもはいるだけだよ?」

 

悪戯っ子みたいに眉を上げた

小悪魔かっつうの


おれを待つじゅん追いかけベットから降り

浴室へと肩を並べて歩いた



でもじゅん…


…その約束は…

 

出来ないかもしれない