翔side

 

日が傾くのを

肩を寄せ合う時間の流れで感じていた

 

「そろそろ帰らなきゃ…」

「あぁ…」

 

「くふふっこれじゃ…帰れないよ?」

 

繋いだ手俺も…じゅんも

強く解こうとしない

 

「…送ってく…」

「う…ん」

 

そしてこの部屋に甘い余韻だけを残して

じゅんは帰って行った

 

 

それからの日々

 

今までと変わらず

 

外で会って

ファストフード店で何時間も話したり

 

図書館に行ったり…

 

暑い夏をいくつも共に過ごしていった

 

そんな日々の中で

今日は特別な一日だった

 

「きょう…じゅんの誕生日だよな?」

「え?あ…知っててくれたの?」

 

今日は何しようか?

顔を見てからからその日の気分で決めていた俺たち

 

「当たり前だろ?」

「うれし…」

 

付き合ってから初めてのイベントに
 

どんなふうに

じゅんが生まれてきてくれたこの日を祝おうか

 

そわそわと落ち着かない日だった

 

「なにか欲しいのないの?」

「うん…ないかな…」

 

「映画は?」

「ん…この前見たし…」

 

「そうだった…じゃあ…」

「しょ…く…ん」

 

「ん?欲しいの思いついた?」

 

「ケーキが食べたい」

「ケーキな?」

 

「うんっ」

「どこのがいいかな…」

 

スマホで

食べれそうなところを探してると

 

「おっ…ここは?」

 

美味しそうなケーキと

お洒落な外装のお店が目に止まる

 

誕生日を祝うにはこういう場所がいいだろう

 

「…あ…ね…しょうくん…と二人で食べたい…な」

「へ?」

 

顔を上げると

どこか恥ずかしそうに細笑んでいて

 

「じゅん…?」

「二人きりでお祝いしてくれる?」

 

首を傾げて俺の顔を覗き込んでいる

 

どくどくと鼓動が早くなったのを

悟られないように冷静に

 

「じゃあ…うち来る?」

 

微かな期待を込めて誘うと

こくっとわずかに頷いた

 

「…ろうそくもつけてもらおうか?」

「ふふっうん…」