潤side

 

「美味かったな…」

「うん…美味しかった…ありがと…ごちそうさまでしたって言っていいのかな?」

 

「ふふっ…いいって…さっきじゅんがおごってくれたから」

「だって…」

 

チケット代の代わりだもん

という前に

 

「どうする?」

 

って次の予定の事を切り出してくれたから

それ以上は言えなかった

 

スマートだったな…財布出すの

こういうの慣れてるのかな…

 

見た事も無い誰かに

ちっちゃな嫉妬して

 

勝手に胸が苦しくなった

 

「そうだね…」

 

まだ帰りたくないな…

もっと一緒にいたい

 

映画の話まだしてないし…

 

俺たちが並んでいる合間に

後ろにも列が出来ているの知っていたし

 

狭い店内では居座る事も出来ず

食べるだけ食べて出てきてしまった

 

「とりあえず…歩こっか?疲れてない?」

「ぜんぜん疲れてないよ?」

 

「そっか」

 

歩きながら

ファストフード店の空席を見つけて

 

「しょうくんは?」

「ん…俺コーヒーかな…」

 

「俺も…あっいいよここは俺が…」

「ありがと…」

 

安い割に

美味いコーヒーをすすりながら

 

映画の話

学校の話

 

本当にいろんな話をした


しょうくんの話はどれもが楽しくて


それにしょうくん話を聞くのが上手いから

俺もいっぱい話すことが出来て


会話ははずんだ

  

「でさ…」

「うん」

 

その時

ぶぶ…とカバンが震えて

 

「じゅんじゃない?」

「え…あ…ごめ」

 

カバンの中から取り出したスマホをタップした

 

「ふふっ」

 

「彼女?」

「へ?」

 

「違う…さっき言ってた智にぃ…」

 

自分でも抑揚のない声だって思ったけど


誰かと付き合ってるって思われてるのが

嫌だった

 

「フィギュア…作ったんだって…」

 

思わず笑みが零れてしまった画面を

しょうくんに見せると

 

「あ…すげ…これお兄さん作ったの?」

「うん…趣味でね」

 

「まじですげぇな…」

 

スマホを真剣に見つめるしょうくんから視線を外して外を見れば

 

すっかり陽は落ち


辺りは陽の光とは違う

輝きをまとった街へと変わっていた

 

彼女…か

 

さっきまで

楽しかったのに

 

その一言に

急に寂しくなった

 

この気持ち…いつかは

消えるのかな…

 

そしたら…今日みたいに

友達になれる…

 

だけど…

 

やっぱり

 

俺は好き…だよ…しょうくん

 

ガラスに映るしょうくんに

心の中で話かけた