潤side
本当は
ここにいてはいけないと思っているのに…
堅く握られた手の温もりを解くことが
俺には…出来ない
「あのな?」
だから目を見れず静かに話し始めた翔くんの声に耳だけを傾けた
「あいつは仕事辞めたんだ…だからもう局で会うことも無いし…それに俺たちに近づかないと誓約書も書かせた」
「え…?あ…ほん…と?」
思わず顔を上げると
柔らかな笑みを浮かべ頷いた
「本当だ」
「そう…なんだ…」
「だから…ここからいなくなる必要はない…」
「ここに…いて…いいの?」
「いいに決まってるだろ」
じゃあ…俺にも…守れたの…?
翔くんの事…も…?
ずっと苦しかった時間が
すっと消えて無くなって
この手の温もりが
愛しく思えると止まったはずの
涙が溢れてきた
「…ありがと…翔くん…ごめんね…」
「泣くなよ…それより俺たちの事…おれの事…守ろうとしてくれてありがとな」
霞む先優しく手強い瞳で
そんな事言われたら…
「う…ふぇ…」
「ったく…ほら泣くなって言ったろ…」
困ったように眉を下げ
優しく目元を拭ってくれる翔くんの目にも
光るものを見つけて
また涙が零れる
「潤…だから二度と…愛さなきゃ良かったなんて言うなよ?」
あっ…
微かに残る記憶の中
きつく抱きしめられた温もりを思い出していた