翔side

 

「はぁ楽しかったぁ」

 

お互いの手の温もりを残したまま

車に乗り込む頃には

 

辺りは完全に真っ暗で

どこからが海なのか

 

ここからだと見えなくて

 

俺達が連れてきた潮の香りと

遠くで聞こえる波の音が

 

はしゃいで駆けた浜辺が

すぐそこにあると教えてくれている

 

「寒くないか?」

「うん大丈夫っ」

 

くしゅん…

 

くしゃみをした後

へへっって笑っているじゅんに

 

「あぁほら…これ掛けてすぐ温まるから」

 

後部座席に投げ出していたブランケットを渡しエアコンを強めた

 

「ありがと…」

 

「腹減ってない?」

「うう…ん少し?」

 

ぐぅ…と

今度は可愛い音が車内に響く

 

「ふははっじゅんのお腹は素直だな」

「もぉ…笑わないでっ」

 

ふははっ

 

うっすらとお互いの顔が見えるだけなのに


恥ずかしかったのか

ぷくっと頬を膨らませているのが見え

 

そんなじゅんに

俺は頬が緩むばかりだ

 

「ふはっわるかったな…よしっ今日は美味いの食いに行こぜ」

「やったぁ」

 

その頬の膨らみははすぐに萎み

 

弾む声を乗せて

車は走り出した