翔side

 

「「ただいま…」」

 

そう声を揃えて帰ってくるのは

随分と久しぶりな気がする

 

「しょうくん…手洗って?うがいして?」

「はいはい…」

 

脱ぎ捨てたコートを当たり前に拾うと

寝室に消えていく

 

いい奥さんだよ…ほんと

 

体調管理も完璧でここ数年潤に合わせた食事で身体もずいぶん軽くなっている

 

部屋着に着替え入れ替わって潤もうがいを終わらせると二人の時間が始まった

 

「しょうくん…今日はいいよね?夜に甘いの食べても」

「いいんじゃね?たまには」

 

「じゃあ…どうぞ召し上がれ」

「これ…」

 

昼間食べそこなった小さな赤い器が

目の前に置かれた

 

「うん…少しね温めてきたから…冷めないうちに食べて?」

 

スプーンを差し込むと

中からトロリとした液体が


それをすくって口の中に運ぶと

甘い香りとほろ苦さが広がる…

 

「うまっ」

「ほんと?」

 

「まじで美味い」

「良かったぁ…」

 

「しょうくん…ありがと」

「ん?」

 

二口目を口に運ぶ手が止まった

 

「いつも…味方になってくれて…それと…ずっと傍にいさせてくれて…ありがと…」

 

そんな事を言われると

思ってもいなかったから…

 

「そんなに見つめないでよ…照れるじゃん」

「じゅん…」

 

「みんなの前だとなんとなく…恥ずかしくて言えなかったからさ」

 

あっ…

だから俺には一言だけだったんだ

 

「しょうくんはいつも言葉だったり態度で教えてくれるから…たまには俺も言いたいなって」

 

「じゅん…ありがと…」

 

みんなの喜ぶ顔が見たいという潤

 

潤の笑顔を引き出すのは

あの三人には容易い事で


それにヤキモチがないと言えば嘘になるが

 

こうして俺だけに特別感を与えてくれるのが

単純に素直に…嬉しい

 

このケーキに隠されていた

甘くて濃厚なチョコみたいな潤の想い

 

それに触れることが出来て…おれ…

やっぱりお前の特別であり続けたいと思う

 

ずっと…

 

なんて考え深く未来を描いていたら

 

「俺にも一口ちょうだい?」

「ふはっいいよ…ほらあ~んして?」

 

無邪気に口を開けて待っているから

その無防備な唇を奪って

 

「じゅん…すきだよ」

 


蕩けるような甘い気持ちをくれたお前に

俺からも…変わることのない思いを送った

 

今日はValentine Day…

こんな甘い夜もいいよな…?