翔side

 

何もない日が


どれだけ

 

幸せな事なのだろうか



 

「…まだ眠いの…に」

 

何度か体を揺すってやっと目を開けた潤の手を引いて歩いてリビングへと戻る最中

 

まだまだ眠そうな潤は目を擦っている

 

「ふははっ…ちゃんと目開けて歩かないと…」

 

「いったぁ…」

「あぁ…もう…だから言ったろ?」

 

そう言った直ぐに


テーブルの角に足の指をぶつけ蹲ると

うっすらと涙を浮かべて俺を見上げた

 

「しょうく…」

「ん?撫でてやろうか?」

 

「う…ん…撫でて?」

「仕方ねぇな…ほら痛くない…痛くない…痛いの俺にうつっちゃえ」

 

まぁ…多少…恥ずかしさもあるが

あのくりくりな瞳にお願いされたら…

 

同じように蹲り


呪文のように言いながら撫でていた

俺の手を止めた

 

「しょうくんにうつるのはダメっ」

「ダメなの?」

 

必死な声にハッとして

潤を見つめると

 

痛みからではない涙を浮かべている


「うん…ダメなの…」

「そっかぁ…じゃあ…遠い空に投げてしまおうか?それならいい?」

 

「いい…」

「ふふっじゃあ…痛いの飛んでいけぇ」


「治ったっ」

「はやっ」

 

泣きそうな顔が一変して

笑顔になったのに

 

「しょうくんの声は魔法みたい」

「魔法?」

 

悲しそうな寂しそうな顔をして

俺を見ているのに見ていないみたいで…

 

「あっ…うん…あ…だって今痛いの本当に消えたんだもん」

 

でもそれはほんの一瞬で

へへっと笑う潤に


俺も笑顔になっていた