翔side

 

この場所が…

 

それを知っているのは


俺とマネージャーと

騒ぎを聞きつけ対応してくれた

ほんの数人のスタッフだけ

 

何があったのか知っているけど

ここだとは知らないはずの雅紀が

 

「にのね新しいゲーム買ったんだって」

と潤ににこやかに話しかけてくれ

 

並んで歩く雅紀を少し見上げ

楽しそうに目を細めて笑っている

 

少し後ろを歩いている俺だけ

その楽しそうな世界から取り残されていた

 

この角を曲がると…

 

嫌でも思い出してしまうあの記憶に囚われ

苦しくなった

 

だめだ…こんな弱い自分じゃ

 

『きっと大丈夫…』

大丈夫…だいじょうぶ…

 

息を吐くと同時に角を曲がる二つの背中に

緊張が俺を襲う

 

「でね…」

 

それまでの弾むような話声が止み

その部屋の前で足が止まった

 

じゅん…っ

 

「じゅんちゃん?」

 

「あっううんごめんね?でね…かずのゲームぼくもしたいな」

「ふふっさせてくれるよ潤ちゃん好きそうだってにの一緒にやりたがってたよ?」

 

何もなかったかのように歩き出した後ろ姿にほっと胸をなでおろした

 

思い出さなかったんだ…

 

よかった…

 

「しょうくん?」

「翔ちゃん?置いてくよ?」

 

ふり返った二つの笑顔に少し足早に追いつくと

やっと楽しい世界に戻ってこれた

 

このまま…

今のじゅんのままでいいから…

 

笑っていて欲しい