翔side

 

潤の涙に少しの迷いが生まれ

そんな自分に戸惑った

 

冷たいミネラルウォーターと一緒に

迷いを喉に流し込み飲み込んで


潤が戻ってくるのを待った

 

…遅いな…

 

いつもなら顔の周りの髪を濡らして

『しょうくんっ顔洗ってきたっ』

とにこにこと戻ってくるはずの時間が

経っているのに…

 

「じゅん?」

浴室を覗くと蹲る潤を見つけ

 

「おいっじゅんっどうした?」

「しょうくん…」

 

焦りに大きな声を上げてしまうと

ゆっくりと顔を上げ俺を見つけ

 

手を伸ばして

 

俺を求めてくれるから

迷わずその手を取り抱きしめた

 

「あのね…」

「ん…?」

 

胸元でくぐもる声は

何かを話そうとしていたけど


ここではなく

目を見て聞いてあげたい

 

夏のあの日


記憶とリンクした時の潤の姿を

思い出した

 

きっと突然流れた涙に戸惑い

鏡の中の自分に何かを探していたんだろう

 

「ここだと身体冷えるから…あっちにいこ?」

 

抱き上げたままソファーに運び

ゆっくりと降ろした

 

「ありがと…」

「頭痛くなった?」

 

「へ?なんでわかるの?」

「わかるよ…潤の事ならなんでも」

 

「…なんでも?」

「そうだよ?」

 

ふふっと小さくも笑ってくれたことに

ホッとしたが

 

まだ少し頭が痛むのか

その笑顔は少し曇って見えた