翔side

 

「ただい…まぁ…」

 

声が小さくなったのは

深夜になる時間帯と言うことと

 

リビング明かりが消えていたから

 

コートをソファーに脱ぎ捨てネクタイを緩めるとやっと息が深く吸える気がした

 

この空間に漂う潤の存在感

 

それに触れると張り詰めた気持ちが溶かされ

ただの男に戻れる唯一の場所だった

 

シャワーを浴びる前に潤の寝顔を覗きに行こうとドアを開けると寝室に

 

潤の想いが立ち籠めていた

 

朝にはなかった新鮮な俺が使っている

フレグランスの香り

 

その中で俺が贈ったブランケットを抱きしめ

眠っていた姿に

 

「…じゅん…」

 

 

『あの子も…大人になったってことか』

にのの言葉と

 

あの日の潤の涙を思い出していた