潤side

 
『久しぶり…楽屋に遊びに行った以来?か』
 
「…なに?」
『なに?…ってそんな淋しいこと言うなよ』
 
 
『まぁいいや、それよりメール…返信待ってたんだけど…』
「あぁ…ごめん…最近忙しくて」
 
 
震える声を悟られないようにと曖昧な相槌しか出来なかったから早々に電話を切った

ポンっとシートに投げて息を吐いた瞬間また車内に着信音が響いた
 
このメロディー…
 
「おつかれ…さま…」
『どうした?…そんな声して…淋しかったのか?なんてな』
 
ふふって笑う声に泣きそうになった
 
「そう…だね…淋しい…かな」
『…何かあったのか?』
 
「…しょう…くん」
『何かあったんだな?直ぐ帰るからそのままマネージャーに送ってもらってこっち来い、いいな?』
 
自分の事だから独りで乗り越えたい
けど…もう限界かも
 
会いたいよ…
聞いて欲しい…
「何か会ったら必ず言う」って約束…したし
 
でも、頭の中で斗真の言葉が離れなくて
翔くんの声が優しくて
 
涙声がばれるのが嫌で言葉が出てこない
 
『潤?これスピーカーにしてマネージャーに聞こえるようにって…できる?』
「う…ん…」

車内に響く大好きな低い翔くんの声…
 
『おつかれさま…今さ、にのと話してて今日中に松本にも話したいから、俺のマンションまで送ってきてもらって良いかな?』
「櫻井さん、何かトラブルですか?」
 
『いや…そんなんじゃないよ…』
「でも…」
 
『にのもいるし、何かあったら直ぐ言うから…心配しないで』
「…わかりました…これから向かいますので、あと15分で着きますよ?」
 
『ああ…大丈夫…俺達もその位になるから』
 
『松本…話終わったよ…スピーカー切って』
 
「しょう…くん…」

再び耳に届く声は優しくて力強くて…
俺の心を震わせる

『待ってるから…詳しく聞かせろよ』
 
「うん…じゃ…あとで」
 
「松本さん、本当にトラブルではないんですよね?」
「えっ?あぁ、うん…違うよ?」
 
ミラー越しに心配そうな表情のマネージャーに、今できる精一杯の笑顔を見せると

「ならいいんですけど…」と前を向き翔くんのマンションへと走らせてくれた
 
会いたい…
会えるんだと思うだけで
 
心が軽くなっていた