優しさってなあに(3) | 天使の囁き(童話で心を癒して)

優しさってなあに(3)

    おかあさんのゆうき
 えきのかいさつぐちを、でるとすぐデパートのいりぐちです。

 おかあさんのかいものはながいのでちょっといやです。

 みーちゃんのおかあさんは、えらぶのも、きめるのも、ものすごくじかんがかかります。

 それに、えらんだら、みーちゃんのいけんをききます。

 だから、ずっといっしょにいないとダメなのです。
「おかあさん、さっきのおようふくで、いいとおもうよ」
「そうかしら、こっちのほうがいいような、きがするけど」
「こっちもいいけどね、はやくきめてよ」
「みーちゃんが、えらんだほうにしようか」
「どっちもにあってるけど、さっきのほうがちょっとやすいし、ぜったいにおすすめよ」

「じゃあ、ちょっときてみるからまっててね」
「おかあさんったら」
 みーちゃんはちょっとつかれました。

 いつも、きまるまでがながいのです。
「みーちゃん、どうこっちのほうがいいでしょう、さっきのよりおかあさんきにいった」
「じゃあ、それにしたら」
「みーちゃん、つめたいいいかたね」
「みーちゃんは、さっきのほうがいいって、いってるでしょ」
「そんなに、おこらなくってもいいじゃない」

「みーちゃんの、いうことなんか、きいていないくせに」
「ごめんね、やっぱりみーちゃんのえらんだほうにする、きがえるからまっててね」
 おかあさんはしちゃくしつに、もういちどはいりました。

 みーちゃんは、ふくのあいだにすわりこみました。

 さすがに、にじかんもあるきまわると、つかれてしまいます。
「おかあさん、あの、おんなのひとね」
「どうしたの」
「なんかしらないけど、あのかみぶくろにいれてたの」
「みーちゃん、みてたの」
「うん、みーちゃんこの、おようふくのあいだからみてたの」
「まちがっていれたのよ、ちょっとこのおようふくもって、まっててね」
 おかあさんは、そのおんなのひとに、ちかづいていきました。

 そして、そっとはなしかけたのです。

 みーちゃんは、はなれているのでなにを、はなしているかわかりません。

 だけど、そのおんなのひとは、かみぶくろにいれたものを、もとのばしょにかえしました。
「ごめんね、おじょうちゃん、まちがってかみぶくろに、はいってしまったみたい、もってかえらなくてよかった、ありがとうね」
 そういって、みーちゃんのかおを、はずかしそうにみながら、はなれていきました。
「おかあさん、なんていったの」
「ちょっとこわかったけど、むすめがかみぶくろに、なにかはいったのをみたっていうのですが、まちがいですよね」
「そうしたら、どうなったの」
「あら、ほんとこんなのが、はいってるってビックリしてた」
「あのひと、じぶんでいれたのに」
「あのひとが、いいひとでよかった」
「どうして、ひとのものをとるのは、わるいひとでしょ」
「そうよ、だけど、あのひとは、ちゃんとはいってるのを、みとめてかえしたでしょ」
「かえしたって、とろうとしたんだよ」
「まだうりばを、はなれていないから、わからないわよ、ほかのとくらべるつもりで、いれたのかもしれないよ」
「そうだね、そうなんだ」
「わるいひとだったら、おかあさんがこえをかけるだけで、にげていくとおもうの」
「そうか、おかあさんみたいに、まようひとなんだ」
「おかあさんは、まよってもかみぶくろに、いれないけどね」
「あんなときは、こえをかけたほうがいいの」

「みーちゃんはこえをかけないほうがいいよ」

「どうしてなの」
「こどものいうことを、きかないおとながおおいから、それにあぶないからね」
「そうしたら、だまってるの」
「だまってるのもだめね」
「じゃあ、どうすればいいの」
「とったひとにわからないように、おみせのひとにいえばいいの」
「そうか、そうだよね」
「まあ、みーちゃんは、おかあさんにいえばいいのよ」
「うん、そうする」
 みーちゃんにはそういいましたが、おかあさんはこわかったのです。

 じぶんがみていたら、だまってみすごしたかもわかりません。

 こどもに、わるいことをみせたまま、おわるのがいやで、こえをかけたのです。

 あやまってくれるひとで、よかったとおもいました。

 ちょっと、ゆうきがいるできごとでした。
「さっきのひとも、みーちゃんがみてくれてよろこんでるとおもうよ」
「どうして」
「ほかのをえらんでて、かみぶくろにいれたのをわすれたらこまるでしょ」
「うん、とっちゃうことになるね」
「だから、みーちゃんに「ありがとう」っていったんだよ」
 みーちゃんも、それをきいてホットしました。

 そして、これもやさしさかもしれないとおもいました。