「本物のリクルートマン」
「本物のリクルートマン」
先日、リクルート同期のＳ君が突然訪ねて来た。
Ｓ君：「武谷（たけや）、すまん。
近くまで営業に来たんだけど、ちょっと寄ってもいいか？」
私：「おー、いいよ。」
２年ぶりぐらいの再会かな。
２年前は、丁度彼が今の会社に転職したばかりだった。
Ｓ君は、１９８４年にリクルート入社後、主に住宅情報事業に携わり、２０年程度勤務した後、
ＯＢ数人でベンチャー企業の立ち上げにチャレンジした。
しかし、その経営がうまく行かなくなり、最後まで残務処理やメンバーの再就職の世話をして
全て整理した後に転職したのだ。
Ｓ君：「久しぶりやな。
忙しいところすまんな。
ちょっと近所に営業に来たんで寄らせてもらったわ。」
私：「それにしても汗びっしょりだな。
今日は暑いもんな。」
Ｓ君は、私と話している間、ずっとハンカチで顔の汗を拭いていた。
Ｓ君：「ほんまに暑いけど、俺が営業せな話にならんしな。
俺、人事異動で人材紹介をやっとる子会社に異動したんよ。
今も面接同席やったわけよ。」
私：「お前、親会社でプレイングマネージャーみたいな仕事やってたよね？」
Ｓ君：「そうそう。
しかし、今期になってオーナー代表が、『Ｓ君、赤字の子会社を立て直してくれんか？
俺も現場におりてやるから一緒にやってくれんか？』 と言うわけよ。」
私：「しかしお前、人材紹介業の経験ないやろうが？
５０歳の未経験者が大丈夫か？」
Ｓ君：「経験があろうが無かろうが、惚れて入ったオーナー代表に、『やってくれんか？』
と言われたから、二つ返事でＯＫしたよ。
『是非やりましょう。』 と。」
私：「それで今はどんな感じ？」
Ｓ君：「新卒の頃と同じよ。
毎日数十件アポ取りの電話して、訪問して、人を探して面談して、面接同席して、
成約して入社するまで全部自分でやってるよ。」
私：「それは汗だくにもなるわな。
マネジメントはしてないんか？」
Ｓ君：「たった１０人ぐらいの赤字会社でマネジメントもくそもあるか？
俺が自分で稼ぐ姿を見せるしかないやろ？」
私：「５０歳の新人か？」
Ｓ君：「うん、しかしな、俺は今まで人材紹介業とか全く興味が無かったけど、
このビジネスはこれで有りやな。」
私：「ビジネスモデルもくそもないやろ？ シンプルやろ？」
Ｓ君：「うん、めちゃめちゃシンプルやな。
しかし、それなりに企業や人との出逢いがあっておもろいし、固定費が人件費以外は
ほとんどかからんやろ？」
私：「そうそう、これなら一人でもやっていけるイメージがあるやろ？」
Ｓ君：「うん、絶対できるね。
おかげさまで新たなビジネスに関わることができたよ。
まあ、まずは今の子会社を今期は絶対に黒字化して、
毎年利益が出るように軌道に乗せるけどな。」
私：「おー、頑張れや。
お役目を果たして、いつか気が向いたら、自分でやってもいいよな。」
Ｓ君：「うん、将来サラリーマンを辞める時の選択肢の一つとして考えとくよ。」
５０分ぐらいの会話だったが、終始ハンカチで汗を拭いていた。
真正面から初体験の人材紹介業に取り組んでいる姿が印象的だった。
既に、毎月コンスタントに成約を上げているらしい。
このようなチャレンジャーが、本物のリクルートマンだと感じた。
５０歳になっても、２２歳の頃と変わらない真摯な姿勢を持ち続けている。
Ｓ君はまさに、 「あ・お・い・く・ま」 だ。
「焦らない」 「怒らない」 「威張らない」 「腐らない」 「負けない」
素晴らしい同期に恵まれて幸せだ。
以前、家内に会わせた時も、「Ｓさんって本当に尊敬できる人だね。」 と言っていた。
「生きているうち はたらけるうち 日のくれぬうち」 みつを
合掌。
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