声明 核兵器禁止条約採択1周年にあたって
世界連邦運動協会は2018年7月7日に次の声明を発表致しましたのでご報告いたします。
声明 核兵器禁止条約採択1周年にあたって
本年7月7日は国連本部で開催された交渉会議において核兵器禁止条約が採択されて1周年にあたる。
核兵器の拡散を防止するだけでは核のない世界は実現しない。核兵器保有国が核をなくす努力をしなければ、非保有国の核開発を止める主張は説得力を持たない。核拡散防止条約(NPT)は第6条において「全面的かつ完全な軍縮に関する条約交渉を行うことを約束する」との誓約を確保している。核兵器禁止条約は非保有国による開発・保有を禁止するのみならず、保有国が保有する核を解体していく義務にも触れた画期的なものであり、NPT第6条の理念に実効性を持たせるものである。
私たちは1948年8月6日、広島被爆3周年を機に発足以来、国内外の関係諸団体と協力し、一貫して核兵器の廃絶を訴えてきた。物理学者アインシュタイン博士は、日本初のノーベル賞受賞者となる湯川秀樹博士と会い、「私の理論のためにあなたの国に原爆が落とされて申し訳なかった。」と言って涙を流し、その後ともに世界連邦実現のために力を注いだ。創生期において核物理学の最先端の学者たちも活動の中心にいたことが当団体の特色である。「国家の安全保障のためには他国の無辜の民を犠牲にしてもやむをえない」という思想が核廃絶の妨げとなっている。世界規模・地球規模の安全保障体制を創設し、核なき世界を実現することが私たちの目標である。
日本政府は毎年、国連に核兵器廃絶決議を提出し、圧倒的多数の国の賛成を得ているが、その日本政府が核兵器禁止条約の交渉会議に加わらず、いまだこの条約に反対の立場を取り続けていることは遺憾である。すぐさま核兵器禁止条約に賛成するわけにはいかない理由があるにせよ、唯一の被爆国として核兵器保有国と非核兵器保有国との間を取り持ち、核兵器廃絶に向かう道筋を提示する積極的な外交を展開することが望ましい。
政府は核兵器禁止条約には反対しながらも、核なき世界の実現のために努力することは繰り返し表明している。そこで日本ができる一例を示したい。
このたび、北朝鮮の核廃棄に関して、日本は「完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄」という基準を繰り返し要望した。この基準は核兵器禁止条約第4条の「時間枠をもった検証可能で不可逆的な核廃棄」という基準と極めて類似している。ならば、この基準はどのようにすれば満たされるのか、具体的な条件や国際的な検証手段を日本から提唱し、北朝鮮の核廃棄のみならず世界の核廃絶に向けて具体的行動を示してほしい。
被爆者たちは自らが生存するうちに核兵器のない世界が実現することを望んでいる。その希望を実現することこそが唯一の被爆国・日本の責務である。