最終回 塩浜修著「小説で学ぶ逮捕・取り調べ」第2話の11 TPPと児童ポルノ11
最終回 塩浜修著 「小説で学ぶ逮捕・勾留・取り調べ」 第2話の11 TPPと児童ポルノ禁止法・山田編・11
<前回までのあらすじ>
「TPPに反対する若者たちの会」の山田副会長は、TPPの問題点が載っている雑誌を買ってみんなに勧めたり学生にプレゼントしたりしたが、
雑誌の別のページで16歳のモデルが小さい水着を着ていることが児童ポルノ法に違反しているとして逮捕された。
当初は、「TPPに反対する若者たちの会」の亀田静子会長(県議会議員)と共謀したという調書を作ろうと必死だった警察・検察だったが、
ここは事実に反するので山田が強く否定。
亀田静子会長は「嫌疑不十分」で起訴猶予。
山田は略式起訴され、罰金50万円の略式命令がされたが、なんと「刑が軽すぎる」として検察側から正式裁判が請求された。
<今回のスタート>
略式命令に被告人側から14日以内に正式な裁判ができるのはわかるとして、検察側からもできるとは知らなかった。
こちらが求刑を聞いて、反論して短くしてもらったわけではない。知らないところで勝手に50万円と決めておいて、「甘すぎるから」と裁判に狩り出されるとはたまったものではない。
そもそも、検察側から、「この程度の事件で本当の裁判やるなんて面倒くさいし、そっちだって面倒くさいよね。
だから書面だけでチャチャッと済ませて、お互い終わりにしようよ。あー、かったるい」
と「略式起訴」を選んだはずだ。それに基づいて「略式手続」に入り、裁判所から「50万円払えば全部終わり」という「略式命令」が出たのだ。
最初に「略式起訴」によって正式な裁判を回避する手続きに入ったのは検察なのに、
その検察からも「やっぱ、面倒がらずに正式な裁判でいくことにしたよ」ということができるとは思わなかった。
検察が略式手続を選んだ時点で最高でも100万円の罰金。略式で懲役にはできない。それなのに「50万円じゃあ軽すぎるから、やっぱ正式裁判」という気持ちがわからない。
ともあれ、亀田静子会長の方は「嫌疑不十分」で終わった。
弁護士によると、県議会議員を逮捕しておきながら、起訴することまで持ち込めなかったとなると、これに関係した上層部は出世に影響するらしい。
言葉は悪いが、山田としてはザマミロという気持ちだ。
せめて1人だけ生意気だった山田については痛い目に遭わせたいと思ったのか?
さて、シャバに出た山田は自分の認識と周囲の認識のギャップに直面した。
何しろ、新聞などで実名が出ており、しかも単に「16歳のモデルによる児童ポルノを所持・保管し、周囲に頒布した疑い」という書き方なのである。
せめて「山田容疑者はTPPの記事を目的に買っただけであるとして容疑の一部を否認している」くらい書いてほしかった。
TPPの問題点が載っているからそれを目当てに雑誌を買ったのであり、別のページでたまたま16歳のモデルが出ていた、しかも裸ではなく小さいながらも水着は着ていた・・・などのこちらの言い分は一切書いていない。
警察・検察はこちらを有罪にしたくて仕方ないのだろうが、新聞記者は一方的に警察の発表だけ載せるのでなく、こちらの弁護士に取材してこちらの弁明も載せるべきではないか。
そもそも、逮捕されたって裁判が確定するまでは「無罪の推定」があることは中学の社会科レベルの話であり、なぜ逮捕段階で実名を晒し、呼び捨てにし、犯人扱いするのか。
それに、本当にこの雑誌が児童ポルノならば、いくら所持罪が2014年成立・2015年から施行されたとは言え、買った人(全国にたくさんいるはず)のうちの2人よりも、まずは製作者・出版社を問題にするべきではないのか。
そうしない点が、まさしくこの事件の政治的意図をさせるものである。
亀田静子県議会議員との共謀を「インチキ自白」させることができなかったものだから、亀田静子県議会議員と山田の逮捕をうまく並べて、共謀っぽく印象付けている。
おかげでネット匿名掲示板では、そそっかしい人々により、山田まで県議会議員ということになってしまっている。
「税金ドロボーの山田、辞職しろ」って、別に議員じゃないんですけど。
自分は「政治犯」のつもりでいたが、考えてみると世間的には単なるロリコン変態野郎、政治犯でなく、猥褻・破廉恥犯なのだ。
会社内では営業成績トップの山田だったが、営業から外された。
営業先からクレームがあったのか、こちらが先にトラブル回避したのかわからない。
山田としては、むしろ相手に会ってしっかりと説明したかった。
何なら雑誌全体を見せれば児童ポルノとはほど遠いものであり、相手を納得させる自信もあった。
しかし、その機会は与えられなかった。
同僚からは、「三井陽子部長が怒っている。言いたいことはいろいろあると思うが、とにかくここは反論せずに神妙にしておいた方が良い」と強く忠告された。
三井陽子部長の前で
「このたびはお騒がせし、会社の皆さんに多大な迷惑とご心配をおかけし、誠に申し訳ありません」
と言って頭を下げた。
前から記者会見などで政治家やタレントが「お騒がせしたこと」や「多大な迷惑とご心配をおかけしたこと」をおわびしているのを、
「やったこと自体についてはどう思っているのか」
と違和感を持って聞いていたものだった。
が、今回のように、やったこと自体について全く悪いと思っていない時には大変便利な言い方だと思った。
整理すると、結果的に心配をかけ、迷惑をかけたこと自体は反省している。
また、政治活動というものはそもそも戦争という命のやりとりに代えた手段であり、負けた側がひどい目に遭うのはある程度当然、戦争と違って殺されないだけましなのである。
ただ、これは戦う者として至らなかったということであって、道義的には全然反省していない。
試しに、合間を見て少しだけ言い訳してみた。
部長は途中で話を遮り、ひーひー怒りだした。
部長はどこに怒っているのか、
たとえ雑誌の一部であろうと、児童ポルノが少しでも載っているものを所持したことが道義的に許せないのか、
会社に迷惑をかけたのが悪いのか、感情的にでなく、論理的に述べてほしいと思った。
もっとも、その後、三井陽子部長は社長の前に山田とともに出向き、山田以上に深く頭を下げ、「ほら、あなたも頭を下げなさい」などと言っていた。
なんだか小学生を連れて担任の先生に謝りに行く母親みたいだ。
山田の勾留中も、優秀で真面目な山田をクビにしないように懸命に訴えていたらしい。
話を最後まで聞いてくれないのは不服であったが、「三井陽子部長も中々いい人じゃないか」と思いながら、山田も頭を深く下げた。
事実がどうであろうとも、勾留された時点でクビになるのが世間では普通。
営業を外されただけで済んだのは、かなり温情ある対応であるらしい。
判決、 罰金60万円。
わざわざ面倒な正式手続きを踏んだ割には罰金が10万円上がっただけで、これに国が要した費用の方が10万円以上したとしか思えない。一方、山田も負担が増えたわけで両方の損である。
判決理由の中で、山田の反論はことごとく否定された。
録画したテレビ番組の中の洗剤や入浴剤のコマーシャルに幼女が上半身裸で出ているのは特に意図したものではない
↓
被告人がコマーシャルを飛ばして録画したケースもしばしば見られることから、コマーシャルをことさら性的好奇心を満たす目的で保管した可能性は否定できない。
山田が彼女と海岸でいっしょに写した写真のほんの隅にどこかの幼女が上半身裸でわずかに写り込んでいるのは偶然に過ぎない
↓
被告人は既にこの女性との交際を終了しており、通常はその時点で当該写真を破棄すべきこと、通常人の一般経験に照らして明らかである。被告人が交際終了後も当該写真を殊更に所持し続けていたのは、性的好奇心を満たす目的で保管したものと推察される。
20数年前の宮沢りえのヌード写真集の広告が載っている新聞は、汚い部屋の中に紛れていたに過ぎない。存在すら忘れていた。
↓
20数年間の中で見つけ出し、破棄する機会もあったはずであり、性的好奇心を満たす目的であえて保管したものと推察される。
さらに、被告人が所有するアニメ・漫画などの中にも数か所について児童と推察される登場人物の裸体が見られる。このような非実在的青少年に関する裸体画像は本件・児童ポルノ禁止法の構成要件には該当しないが、被告人の性的傾向を推認する証拠にはなりうる。
個々の事案についての被告人の弁明は直ちに理由なしとは断じえないが、全ての事案を総合的に勘案すれば、全体として、性的好奇心を満たす目的が強く推認されるものである。
また、被告人は数点の具体的所有物を証拠に、自身が児童よりも年配の女性好み(俗に言う熟女マニア)である旨を主張するが、そのような性的傾向が必ずしも児童に対する性的好奇心を否定する理由にはならない。
日曜日。
山田は何となく公園に来てベンチに座って佇んでいた。
公園では、数人の子供がウルトラマンごっこをしていた。
もう何十作目になっているのか、今もウルトラマンは世代を超えて愛されている。
「オレ、ウルトラセブン。いろんな技持ってるんだぞ」
「オレ、ウルトラマン・ギンガ。こっちの方が強いんだぞ」
「オレ、ウルトラマンレオ」
「なんだよ、レオなんかすげえ弱っちいじゃん」
「そうだよ、いっつも負けてばっかいるし」
レオを選んだ子が言った。
「レオは、1回目は負けるけれど、特訓して強くなって後で怪獣に勝つんだ。だんだん強くなるから、最後には一番強くなるんだぞ」
朝から曇り空だったが、わずかな雲の切れ目から小さな日差しが差し込んでいた。
明日はきっと晴れるだろう。
「最高裁まで戦い抜く。必ず。」
山田はそう決意を新たにするのであった。
ー 完 ー
この小説はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
判決理由の中には裁判所独自の言い回しがありますが、これは法学部出身たる作者による創作であり、現時点では児童ポルノ禁止法改正案は成立したものの施行はされていません。
<前回までのあらすじ>
「TPPに反対する若者たちの会」の山田副会長は、TPPの問題点が載っている雑誌を買ってみんなに勧めたり学生にプレゼントしたりしたが、
雑誌の別のページで16歳のモデルが小さい水着を着ていることが児童ポルノ法に違反しているとして逮捕された。
当初は、「TPPに反対する若者たちの会」の亀田静子会長(県議会議員)と共謀したという調書を作ろうと必死だった警察・検察だったが、
ここは事実に反するので山田が強く否定。
亀田静子会長は「嫌疑不十分」で起訴猶予。
山田は略式起訴され、罰金50万円の略式命令がされたが、なんと「刑が軽すぎる」として検察側から正式裁判が請求された。
<今回のスタート>
略式命令に被告人側から14日以内に正式な裁判ができるのはわかるとして、検察側からもできるとは知らなかった。
こちらが求刑を聞いて、反論して短くしてもらったわけではない。知らないところで勝手に50万円と決めておいて、「甘すぎるから」と裁判に狩り出されるとはたまったものではない。
そもそも、検察側から、「この程度の事件で本当の裁判やるなんて面倒くさいし、そっちだって面倒くさいよね。
だから書面だけでチャチャッと済ませて、お互い終わりにしようよ。あー、かったるい」
と「略式起訴」を選んだはずだ。それに基づいて「略式手続」に入り、裁判所から「50万円払えば全部終わり」という「略式命令」が出たのだ。
最初に「略式起訴」によって正式な裁判を回避する手続きに入ったのは検察なのに、
その検察からも「やっぱ、面倒がらずに正式な裁判でいくことにしたよ」ということができるとは思わなかった。
検察が略式手続を選んだ時点で最高でも100万円の罰金。略式で懲役にはできない。それなのに「50万円じゃあ軽すぎるから、やっぱ正式裁判」という気持ちがわからない。
ともあれ、亀田静子会長の方は「嫌疑不十分」で終わった。
弁護士によると、県議会議員を逮捕しておきながら、起訴することまで持ち込めなかったとなると、これに関係した上層部は出世に影響するらしい。
言葉は悪いが、山田としてはザマミロという気持ちだ。
せめて1人だけ生意気だった山田については痛い目に遭わせたいと思ったのか?
さて、シャバに出た山田は自分の認識と周囲の認識のギャップに直面した。
何しろ、新聞などで実名が出ており、しかも単に「16歳のモデルによる児童ポルノを所持・保管し、周囲に頒布した疑い」という書き方なのである。
せめて「山田容疑者はTPPの記事を目的に買っただけであるとして容疑の一部を否認している」くらい書いてほしかった。
TPPの問題点が載っているからそれを目当てに雑誌を買ったのであり、別のページでたまたま16歳のモデルが出ていた、しかも裸ではなく小さいながらも水着は着ていた・・・などのこちらの言い分は一切書いていない。
警察・検察はこちらを有罪にしたくて仕方ないのだろうが、新聞記者は一方的に警察の発表だけ載せるのでなく、こちらの弁護士に取材してこちらの弁明も載せるべきではないか。
そもそも、逮捕されたって裁判が確定するまでは「無罪の推定」があることは中学の社会科レベルの話であり、なぜ逮捕段階で実名を晒し、呼び捨てにし、犯人扱いするのか。
それに、本当にこの雑誌が児童ポルノならば、いくら所持罪が2014年成立・2015年から施行されたとは言え、買った人(全国にたくさんいるはず)のうちの2人よりも、まずは製作者・出版社を問題にするべきではないのか。
そうしない点が、まさしくこの事件の政治的意図をさせるものである。
亀田静子県議会議員との共謀を「インチキ自白」させることができなかったものだから、亀田静子県議会議員と山田の逮捕をうまく並べて、共謀っぽく印象付けている。
おかげでネット匿名掲示板では、そそっかしい人々により、山田まで県議会議員ということになってしまっている。
「税金ドロボーの山田、辞職しろ」って、別に議員じゃないんですけど。
自分は「政治犯」のつもりでいたが、考えてみると世間的には単なるロリコン変態野郎、政治犯でなく、猥褻・破廉恥犯なのだ。
会社内では営業成績トップの山田だったが、営業から外された。
営業先からクレームがあったのか、こちらが先にトラブル回避したのかわからない。
山田としては、むしろ相手に会ってしっかりと説明したかった。
何なら雑誌全体を見せれば児童ポルノとはほど遠いものであり、相手を納得させる自信もあった。
しかし、その機会は与えられなかった。
同僚からは、「三井陽子部長が怒っている。言いたいことはいろいろあると思うが、とにかくここは反論せずに神妙にしておいた方が良い」と強く忠告された。
三井陽子部長の前で
「このたびはお騒がせし、会社の皆さんに多大な迷惑とご心配をおかけし、誠に申し訳ありません」
と言って頭を下げた。
前から記者会見などで政治家やタレントが「お騒がせしたこと」や「多大な迷惑とご心配をおかけしたこと」をおわびしているのを、
「やったこと自体についてはどう思っているのか」
と違和感を持って聞いていたものだった。
が、今回のように、やったこと自体について全く悪いと思っていない時には大変便利な言い方だと思った。
整理すると、結果的に心配をかけ、迷惑をかけたこと自体は反省している。
また、政治活動というものはそもそも戦争という命のやりとりに代えた手段であり、負けた側がひどい目に遭うのはある程度当然、戦争と違って殺されないだけましなのである。
ただ、これは戦う者として至らなかったということであって、道義的には全然反省していない。
試しに、合間を見て少しだけ言い訳してみた。
部長は途中で話を遮り、ひーひー怒りだした。
部長はどこに怒っているのか、
たとえ雑誌の一部であろうと、児童ポルノが少しでも載っているものを所持したことが道義的に許せないのか、
会社に迷惑をかけたのが悪いのか、感情的にでなく、論理的に述べてほしいと思った。
もっとも、その後、三井陽子部長は社長の前に山田とともに出向き、山田以上に深く頭を下げ、「ほら、あなたも頭を下げなさい」などと言っていた。
なんだか小学生を連れて担任の先生に謝りに行く母親みたいだ。
山田の勾留中も、優秀で真面目な山田をクビにしないように懸命に訴えていたらしい。
話を最後まで聞いてくれないのは不服であったが、「三井陽子部長も中々いい人じゃないか」と思いながら、山田も頭を深く下げた。
事実がどうであろうとも、勾留された時点でクビになるのが世間では普通。
営業を外されただけで済んだのは、かなり温情ある対応であるらしい。
判決、 罰金60万円。
わざわざ面倒な正式手続きを踏んだ割には罰金が10万円上がっただけで、これに国が要した費用の方が10万円以上したとしか思えない。一方、山田も負担が増えたわけで両方の損である。
判決理由の中で、山田の反論はことごとく否定された。
録画したテレビ番組の中の洗剤や入浴剤のコマーシャルに幼女が上半身裸で出ているのは特に意図したものではない
↓
被告人がコマーシャルを飛ばして録画したケースもしばしば見られることから、コマーシャルをことさら性的好奇心を満たす目的で保管した可能性は否定できない。
山田が彼女と海岸でいっしょに写した写真のほんの隅にどこかの幼女が上半身裸でわずかに写り込んでいるのは偶然に過ぎない
↓
被告人は既にこの女性との交際を終了しており、通常はその時点で当該写真を破棄すべきこと、通常人の一般経験に照らして明らかである。被告人が交際終了後も当該写真を殊更に所持し続けていたのは、性的好奇心を満たす目的で保管したものと推察される。
20数年前の宮沢りえのヌード写真集の広告が載っている新聞は、汚い部屋の中に紛れていたに過ぎない。存在すら忘れていた。
↓
20数年間の中で見つけ出し、破棄する機会もあったはずであり、性的好奇心を満たす目的であえて保管したものと推察される。
さらに、被告人が所有するアニメ・漫画などの中にも数か所について児童と推察される登場人物の裸体が見られる。このような非実在的青少年に関する裸体画像は本件・児童ポルノ禁止法の構成要件には該当しないが、被告人の性的傾向を推認する証拠にはなりうる。
個々の事案についての被告人の弁明は直ちに理由なしとは断じえないが、全ての事案を総合的に勘案すれば、全体として、性的好奇心を満たす目的が強く推認されるものである。
また、被告人は数点の具体的所有物を証拠に、自身が児童よりも年配の女性好み(俗に言う熟女マニア)である旨を主張するが、そのような性的傾向が必ずしも児童に対する性的好奇心を否定する理由にはならない。
日曜日。
山田は何となく公園に来てベンチに座って佇んでいた。
公園では、数人の子供がウルトラマンごっこをしていた。
もう何十作目になっているのか、今もウルトラマンは世代を超えて愛されている。
「オレ、ウルトラセブン。いろんな技持ってるんだぞ」
「オレ、ウルトラマン・ギンガ。こっちの方が強いんだぞ」
「オレ、ウルトラマンレオ」
「なんだよ、レオなんかすげえ弱っちいじゃん」
「そうだよ、いっつも負けてばっかいるし」
レオを選んだ子が言った。
「レオは、1回目は負けるけれど、特訓して強くなって後で怪獣に勝つんだ。だんだん強くなるから、最後には一番強くなるんだぞ」
朝から曇り空だったが、わずかな雲の切れ目から小さな日差しが差し込んでいた。
明日はきっと晴れるだろう。
「最高裁まで戦い抜く。必ず。」
山田はそう決意を新たにするのであった。
ー 完 ー
この小説はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。
判決理由の中には裁判所独自の言い回しがありますが、これは法学部出身たる作者による創作であり、現時点では児童ポルノ禁止法改正案は成立したものの施行はされていません。