中学理科 力・重さの教え方は以前の方が良かった | アトラス塩浜のブログ

中学理科 力・重さの教え方は以前の方が良かった

中学の理科について、昔の教え方の方が良かったと思う部分がある。
質量と重さ(力)の関係や単位のことだ。


1 以前の中学の理科の場合

質量と重さは違う。

質量は「天秤で量った重さ」のことである。
なぜ、天秤で量ったものを特別扱いするか。

月に行くと、引力の関係で重さが6分の1になることはご存知だろう。
600グラムのものを月に行ってばねはかりで量ると100グラムだ。
(正式にはグラム重だが、話の順番上このまま)

では、天秤ではどうか。
月に行っても600グラムのままである。
600グラムの物体は100グラムになるが、分銅も6分の1の重さになるから、結局600グラムの物体は600グラムの分銅と釣り合う。

ということで、天秤で量った重さを特に「質量」と呼び、単位はグラムやキログラム、これに対して、普通の重さはグラム重、キログラム重で表す。

まあ、どっちみち、地球上では、1グラムのものは1グラム重だし、1キログラムのものは1キログラム重の重さを持つ。

2 高校の物理
力は質量×加速度である。
単位はニュートン。
地球上では重力によって1キログラムのものには、9・8の加速度がつくため、重さは9・8ニュートンである。
言い換えると、1キログラム重=9・8ニュートンである。

3 現在の中学の理科
唐突に「1キログラムの質量の物体にかかる力は約10ニュートンとする」と習う。


現在の中学の教え方の良い所
力はニュートン、仕事量・エネルギーはジュール、仕事率はワット。
特に仕事量・エネルギーは、以前は熱量についてはカロリー、力学的エネルギーはキログラム重メートルと不統一、また、仕事率は以前は力学的な場合はキログラム重メートル毎秒、そのくせ電力だけワットだった。
このたび統一されたことにより、力学、電気、熱などの種類に関係なく統一的に考えることができて良いとも言える。

現在の中学理科の問題点
1 まず、上記の長所は、十分に理解した後でわかることである。
階段を2段、3段飛ばして上がるような無理をしている気がする。
まずは、1グラムの水を1度上げるのが1カロリーとか、地球上で1キログラムを1メートル持ち上げるのが1キログラム重メートルというように、まず、実感しやすい話から理解してもらい、やがて、「エネルギーは形は変えても総量は変わらない」ということを教え、しかる後に、中学でやるか高校でやるかはともかく、ジュール、ワットなどの統一単位を教えるのが良いと思う。

2 「力は質量×加速度であり、地球上では重力によって1キログラムのものには、9・8の加速度がつくため、重さは9・8ニュートンとなる」ということを教えない癖に(それは高校物理。文系の人のほとんどは知らない)中学の理科で唐突に「1キログラムの質量の物体にかかる力は約10ニュートンとする」と習う。

これは有害である。
円周率を3とするよりも良くない。

多分、かなり多くの生徒が、1リットルは10デシリットルとか、1センチは10ミリというのと同じような感覚で1キログラムは10ニュートンとか、100グラムは1ニュートンと暗記しているのではなかろうか。

1リットルは10デシリットルとか、1センチは10ミリというのは同じ種類の単位の換算である。
が、キログラムやグラムとニュートンは別物である。
9・8という加速度をかけてあるのだ。

入試の時には計算が楽になるように「1キログラムの質量の物体にかかる力は約10ニュートンとする」としても良いが、教科書や日常学習では、「1キログラムの質量の物体にかかる力は約9・8ニュートン」と教えないと誤解すると思う。

「力は質量×加速度であり、地球上では重力によって1キログラムのものには、9・8の加速度がつくため、重さは9・8ニュートンとなる」ということを教えずに「1キログラムの質量の物体にかかる力は約10ニュートンとする」と教えるのでは、誤解するのが普通であろう。

ではどうするか。
私は昔の方法に戻って、質量と力・重さの違いを教えた上で力・重さの単位は中学ではキログラム重やグラム重を使うのが一番良いと思う。
これに伴い、エネルギーや仕事量はキログラム重メートル、仕事率はキログラム重メートル毎秒にする。
後は、教科書のどこかで、「電力のワットや馬力も仕事率の単位」だということを書いておき、特に換算する問題は出さないということで良いと思う。


なお、カロリーとジュールは、どちらにも捨てがたい魅力があり、私は両方教えることが多い。
温度側から見ると、カロリーの方がわかりやすい。1グラムの水を1度上げるのが1カロリーだ。また、食べ物にはカロリーが表示されていることが多いので、ここで熱エネルギーと化学エネルギーの関係もわかりやすい。

一方、電気の面からいくと、ジュールがわかりやすい。
1ボルト、1アンペアで1秒あたり1ジュールの熱を発生する。


オタクのコーナー
怪獣図鑑などでの怪獣の技の威力は単位がまちまちでどちらが強いかわからない。
ゴジラの尻尾の力は、王選手のホームラン50万本分の威力だとか、ドラコの腕の力はインド象の鼻の力の10万頭分だとか。
鉄腕アトムは「10万馬力のエネルギー」と言っているが、馬力は仕事率である。
もしかしたら、短い時間ですごいことができる半面、すぐエネルギーがなくなる可能性もあるし、実際そういうシーンも多い。