・後編・
蔦や枝に捕まりながら慎重に降りていくのだが、最初の蔦を握った瞬間、すぽっと蔦が抜け落ちた。
流血したセルヴォランを見て笑っていた数分前の自分に見せてやりたい。
これが自分の最期の姿だ。
アニメの様な崖でアニメの様に滑落した。
リックオウエンスのパンツを泥まみれにした人間は私が初めてであろう。
幸い少し擦りむいたくらいで大きな怪我はなかった。
セルヴォランはヘラヘラと笑っていた。
cap・THE NORTH FACE
tops・old L.L.Bean
pants・Rick Owens
shoes・Yohji Yamamoto
bag・「花と角」
血だらけ、泥だらけの我々を現地の人々はゾンビを見る様な目で見ていた。
もう生きて帰れるだけでよかった。
そんな視線は気にならなかった。
今回の遠征ははこうして幕を閉じた。
あとは帰国。
飛行機のチケットがなぜか読み込めずパニックになったり、直前に手荷物に未開封のお茶が入っていることに気づいて飲み干したり、そのお茶がまさかの甘くて飛行機で酔ってしまったり、当然おしっこも漏れそうになったりしたがその辺の話はまたの機会にしよう。
無事に日本に帰ってきた私は採集した昆虫を展足して9月23日のインセクトフェアの卓にドヤ顔で並べることができるのである。
並べた標本に興味を持たれた人がいたとき私は答えるだろう。
「こちらは自己採集品です。山奥の街灯に飛来した所を採集しました。」
と。
・エピローグ・
我々が普段即売会や標本商などを通して購入している昆虫は誰かが採集してきた昆虫である。
それらは時には数十万の値段が付くがほとんどが数百円で捌かれていく。
ところがこの数百円の昆虫を採集することがどれ程大変かということに気付けたこと、それこそが今回何よりの収穫であったと思う。
金額で扱いに差が出てしまうのは然ではあるが、どんな種類でも現地の人間は命懸けで採集をしているのである。
数百円の標本も無碍にはできまい。
そして何より昆虫にも日々感謝する気持ちを忘れずに。
もう海外遠征は懲り懲りだが大きな学びを得ることができた。
ありがとうセルヴォラン。
〜「花と角」的マレーシア採集記 完〜
• special thanks •
企画 セルヴォラン
案内 セルヴォラン
通訳 セルヴォラン
野犬撒き セルヴォラン

