死んでもいい? | 店舗探し.comの過去コラム

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2009/10/31

 

僕って何?

 

そういえばそんなタイトルの小説もありました。

自分はいったい何者で、何のために存在するのか?


にきびがぽつぽつとでき始めると、青年は哲学的な
疑問に苦悩し、答を見つけようとじたばたします。

自分こそは選ばれた真のエリートだと昂然と胸を張
ったかと思えば、世界にとって全く役に立つことの
ない、つまらない無駄な存在だと意気消沈すること
もあります。

悩みの中でもがくうちに、青年はひとつのことに気
がつき始めます。

 

「自分は、他者と取替えのきかない貴重な存在で
 ある」

 

ということが、自分が納得行くような形で確認でき
なければ、人生は拠り所を持たない不安なものでし
かなく、そこから前に向かって進むことは出来ない
のだと。

 

「私にはあなたがいないとダメなの・・・」

 

彼に恋人ができ、初めて他人に自分の存在意義を認
めてもらうことができると、暗くて深い、悩みの森
をさまよう青春時代は終わり、彼は社会へと旅立っ
ていきます。

 

しかし恋にときめく青年も、いつかは下腹の突き出
た中年夫になります。
あなたがいないとダメだと言っていた彼女も、化粧
気のない疲れた顔で家計簿を眺めてため息をつき、
夫の生命保険証書をじっと眺めるような恐ろしいオ
バタリアン妻に変貌を遂げてしまうのです。

もはや夫は、妻からあてにされることも頼られるこ
ともなくなってしまいます。


彼は勢い、レゾンデートルの確認を会社に求めるよ
うになるのです。

 

「この仕事は君でなければ無理だ」


「君がいなかったらこの仕事をやり遂げることは
 出来ない」

 

といった評価は社内での最大の賛辞であり、そんな
存在になることこそが社内での価値を高くするので
す。
彼は自分が会社にとって不可欠な存在だと認められ
るためにしゃかりきになって頑張ります。

 

「俺がいないとうちの会社はやっていけない!」

 

自慢げに発言している人をよく見かけます。
しかし、それが本当だとしたらどうでしょう。
彼がもし、不慮の事故に巻き込まれたり病気に倒れ
てしまったら、会社はとたんに立ち行かなくなり、
場合によっては倒産してしまうかもしれません。

 

生身を抱えた人間に、絶対に確実な明日などはあり
ません。
たった一人の社員や経営者の生き死にが、そのまま
会社の存亡を決定するのだとしたら、誰が本気で会
社のために働けるでしょうか。

 

会社は人間と違って、経営次第でいつまでも生き続
けることができます。
社員の誰が急にいなくなったとしても、その穴をあ
っという間に埋めることができ、何事も無かったか
のように、生き続けることが大切なのです。

 

もちろん、経営者も例外ではありません。

 

明日の命の保証のある経営者などどこにもいないの
です。
経営責任を担った経営者だからこそ、たとえ今日、
自分がいなくなっても、すぐに次の経営者がその椅
子に座り、明日からもスムーズに社業が立ち行くよ
うに、万全の準備をしておくことが当然の義務なの
です。

 

経営者を筆頭に、誰でも容易に取替えのきくことが
準備されている。
しかも社員がそれぞれ、自分は会社にとって必要な
存在であるのだということが、今までとは別の形で
実感でき尊重される。
その両方が同時に担保されていなければなりません。

 

世界的な規模であらゆる分野のパラダイムチェンジ
が進行している今こそ、会社の理念や風土を、発想
の根本から見直し、適切な組織や制度のあり方を模
索しましょう。

 

人の存在意義や価値は、会社の中でしか確認できな
いような、卑しいものではもちろんありません。

いつ消えるとも知れずに、ふわふわと漂うシャボン
玉のように、儚いけれども、たったひとつでも地球
より重く、崇高で気高く、そして愛しいものなのです。