2014/04/29
ゴールデンウィークです。
注意深く観察していると、NHKニュースでは、アナウンサーが「大型
連休」と言うことはあっても「ゴールデンウィーク」という言葉を
使うことがないことに気がつくはずです。
連休中に休めない人から「何がゴールデンだ。」と抗議が殺到する
ため使用を控えるようになったそうです。
SCにとって書き入れ時のこの時期はショップ経営者にとっては
“黄金”に輝いていても、変わらぬ給料で普段より忙しい思いをする
従業員にとっては、“灰色”にしか感じられないかもしれません。
私たち人間は、赤・緑・青の3原色を感じる視細胞を持っています。
その3種類の細胞の興奮の強さによって感じる色が違います。
3つが同じ強さで興奮すると白に感じます。
赤と青が強くて、緑が弱いと紫に感じます。
一般に犬や猫は世界を2原色で識別しています。
犬は近眼で、視力は0.3程度しかありません。
世界はおよそ2色で塗り分けられ、しかもピンボケて見えています。
一方、動態視力は優れていて、素早く動くものをとらえる能力は人間
を越えていますし、視野も220~290度と人間の180度より広く見えて
います。
猫は弱視で色の識別は難しいですが、暗闇では抜群の視力を発揮
します。
昆虫の場合、例えばハチやハエなどは紫外線、青、緑を感じる3種類
の視細胞をもっています。人間は光の振動面を見分ける能力がない
のでどの光も同じように見えますが、虫には偏光を見る能力があり
ます。
ミツバチは青空にある偏光を利用して、迷子にならずに自分の巣に
帰ることができます。
鳥類は赤・緑・青の3原色の他に人間には見えない紫外線も見ること
ができます。
つまり4原色で世界を認識しているわけです。
人間でも女性には4種類の錐体細胞を持った4色型色覚の人がいます。
およそ女性の2~3%が4色型色覚だとされています。
ある4色型色覚のハンガリー人女性がいます。
ハンガリーでは、庭のフェンスを緑色に塗って草木に溶け込まします。
ところが、彼女はこの風習を理解することができません。彼女にとっ
て「フェンスの緑色」と「草の緑色」は、まったく違う色に見えるの
です。
カメラで写真を撮るとき、ヨーロッパ製のフィルムを使った場合は
「草色」が出て、日本製のフィルムを使った場合は「フェンス色」が
出てくることにも気がつきました。
休日に掲げられるハンガリーの三色旗も、家によって「赤・白・草色」
だったり「赤・白・フェンス色」だったりと、まるで違った国旗を
掲げているように彼女の目には見えています。
人間は外部からの情報のうち80%を視覚に頼っていると言われます。
3原色で世界を認識している人間が圧倒的な多数派ですから、世界は
自分たちが見えているようにあるのだと信じて疑っていません。
赤と緑の識別ができないと“色覚異常”と診断してしまうのが、なに
よりの証拠です。
しかし、アフリカの草原に裸で放り出されれば人間は犬より獲物を
獲る能力に劣り、昼の無い闇夜の世界では、敵からの襲撃をかわす
能力で猫に後れを取るはずです。
「座頭市」は目が不自由であるがゆえに、むしろ他の感覚が飛び抜け
て発達し、無敵の剣客となりました。
フィンセント・ファン・ゴッホ、オーギュスト・ルノワール 、レン
ブラント・ファン・レイン、パブロ・ピカソ ・・・。
いずれも色覚異常者とされる画家たちです。
しかし、彼らが表現しえた芸術的な世界は、まさに色覚異常によって
認識された世界に触発された成果なのです。
世界は私たちが目で見て、耳で聞き、鼻で匂い、肌で感じているより
もはるかに豊饒です。その豊饒さには私たちが鈍感だから気付けてい
ないだけにすぎません。
そんな鈍感な自分が信じている世界観などに固執するのは傲慢以外
の何物でもありません。
自らの鈍感さを謙虚に自覚し他者が認識している世界観を尊重するこ
とで、豊饒でデリケートな世界への認識が深まっていくことでしょう。