金沢市郊外にある大乗寺(だいじようじ)は金沢の南方の町はずれ野田山の一角にあり、

周囲一帯は大乗寺丘陵公園となっている。

境内は2万坪あり修行道場として知られ、深い木立の中に苔むした石畳が続いている。

 

黒っぽい総門(県重文)は寛文5(1665)築の茅葺き薬医門。

 

総門を入ると右に折れ、さらに左に折れると正面に丹塗りの山門(県重文)が建っている。

赤門と呼ばれ江戸時代初期の寛永年間(162444)築の三間一戸八脚楼門で、どっしり

した仁王像が安置されている。楼上には釈迦如来、十六羅漢像を安置。

 

山門の右前に面白い石塔が立っている。

 

その横に細身のかっこよい宝篋印塔が木立の間から見える。

宗派は曹洞宗、山号は東香山、本尊は釈迦牟尼仏。

 

曹洞宗大本山永平寺の第三代徹通義介禅師が正応2(1289)に開山、永平寺の

四門首の一つになっている。

境内は七堂伽藍が並ぶ典型的な禅宗様式である。

正面に仏殿(国重文)、左右に回廊(県重文)を廻らして左に東司、僧堂(県重文)

右に浴室、庫裡(県重文)が左右対称に並んで建っている。

大雄殿である仏殿は元禄15(1702)築、方三間の入母屋造杮葺き。

 

写真は仏殿の内部。

 

仏殿の奥に法堂(県重文)が建ち、桁行七間梁間八間の入母屋造。

元禄6(1697)頃、前田藩家老本多氏によって建立。

二代蛍山紹謹禅師は永平寺、総持寺とも関係が深く今の大乗寺を発展させて

太祖と呼ばれている。

その後江戸時代になって前田藩家老本多家の墓所となった。

余談であるが、越後の直江兼続の娘婿が本多勝吉であり、娘と死別したあと

米沢を去り加賀前田家の家老となりこの地で子孫を繁栄させた。

 

内部に入ると正面に観音菩薩を安置している。

 

左手の回廊には僧堂(座禅堂)が建っている。

 

右手の回廊の庫裏を回って行く。

 

他に鐘鼓楼(県重文)、碧厳蔵(奥にある経蔵)、本多家墓所などがある。

この日、境内で出会ったのは夫婦一組だけであり、深い樹木の緑に囲まれた

静寂そのものの修行道場であり、紅葉の頃に是非もう一度訪ねてみたいもの

である。

写真は鐘鼓楼。

 

ホテルに戻って一服して、香林坊から程近い長町の閑静な住宅地の一角に

ある料亭「ささ舟」に行く。

同行のFさんが現役時代から通っているお店であり、一日三組しか客を取ら

ないとのこと。

今回の金沢の旅の私の最大の目的はここだったともいえる。

個室に通され、お女将の接待でゆったりとした時間を過ごす。

まず初物だという越前蟹から始まり、量の少なめのコース料理に舌鼓をうつ。

お酒は「ささ舟竹酒」「手取川」と、さらに「農口研究所 山廃純米生酒

は醸造元直送で実に美味しかった。

いささか飲み過ぎたが、気分良くホテルに戻る。