こんばんは、ジュンです。
1993年に埼玉で起きた愛犬家猟奇殺人事件を下敷きにして作られた、
【 冷たい熱帯魚 】 を観てまいりました。
2009年1月14日。
小さな熱帯魚屋を経営する社本信行(吹越満)と妻・妙子(神楽坂恵)は、
万引きで捕まった娘・美津子(梶原ひかり)を引き取りに、
スーパーへと向かう。
その場に居合わせた店長の知り合い・村田幸雄(でんでん)の取り成しで、
美津子はなんとか無罪放免に。
村田も熱帯魚屋のオーナーだったが、
規模は社本の店とは比べものにならないほど大きなものだった。
人の良さそうな村田は、美津子を自分の店で預かってもいいと提案。
継母である妙子との不仲に頭を痛めていた社本は、
その申し出を受け入れることにした。
さらに村田は、高級熱帯魚の繁殖という儲け話にも社本を誘い込む。
その口の上手さと押しの強さを前に、
いつの間にか村田のペースに飲み込まれてしまう社本だったが・・・。 ( aiicinema より )
もう、何とも、凄いと言うしかない作品・・・
日本映画でこれだけ作れるとは、正直驚き!
韓国映画のように、徹底的にエロとグロを全面に出し、
観ている側が、その世界に麻痺してしまうほどのものだった。
主人公の社本は、再婚した妻と前妻との娘が上手くいかずに、
愛する家族をどうすることも出来ずに、無気力になっている。
村田はその事を一目で見抜き、悪魔の手を伸ばしてきた。
人の良さそうな顔をしながら近づいて来た男は、すぐに本性を現す。
高級熱帯魚の繁殖という話を餌に、詐欺を働き、
自分に都合が悪い相手には、消えてもらう。
『 ボディーを透明にしちまえばいいんだ!』
という言葉を繰り返し、死体を骨と肉に分けてゆく。
骨はドラム缶で完全に灰になるまで焼き尽くし、道路沿いの草むらに撒き、
肉は細かく切り刻み、川に流して魚の餌にしてしまう。
社本は、この死体処理を手伝わされる。
村田と村田の妻が行う死体解体シーンは、壮絶!
血と肉片にまみれながら、冗談を言い、鼻歌を歌い、
本当に楽しそうに切り刻んでゆく。
「お~い、旨いコーヒー淹れてくれ~!」
と、社本に声をかける。
ドロドロ、ベタベタ、グチョグチョ。
そこから、生臭い臭いが漂ってくるように、凄惨な映像が続く。
もう、それは狂気の世界・・・
この解体に使う山小屋は、屋根に十字架が掲げられ、
室内にはいくつものマリア像を飾り、
ロウソクで照らし出す灯りで繰り広げられる。
このシーンを見ながら、もしかしたらこれは、
ある種の宗教的儀式を見ているのではないか・・・?
と、思ってしまうほどだ。
『お前は自分を誇れるような生き方をしてきたのか!
自分の足で立って、自分の手でやらなければ、何も進まない!』
こんな社本に投げかける村田の言葉が、素直に自分の中に入ってきてしまう。
正直、この時点で自分はこの狂気の世界に取り込まれてしまっていたと思う。
この先、この世界がどうなるのかもっと見たいと、思うようになっていたから・・・
新興宗教の中に見え隠れする一種の狂気は、
こんなふうにして作られていくのかもしれない。
こんな凄惨な片棒を担いでいながら、それでも社本は一線を越えずにいた。
それは、崩壊していながらそれでも家族を愛していたから。
しかし、妙子が村田と関係を持っていた事を知った瞬間、
その一線を越えてしまう・・・
そう、狂気の世界へ踏み込んでしまったのだ。
もう、社本はその世界から抜け出せないのか!?
全てが終わった後、むなしく響く娘の乾いた笑い声は、
いったいどっちの笑いなのだろう。
社本の深い思いは伝わったのか・・・
それとも、また新しい狂気が生まれたのか・・・
でんでん、上手い!
そして、妻・愛子役の黒沢あすかが、可愛くて、エロくて、純粋で、
ある意味凄味さえある存在感だった!