いつも、何かあると
お母さんのお墓に行って
黙って座っていました。
お葬式の1年後に新しいお母さんが来て。
親戚の人が集まって、
ひとりひとりのオジさんやオバさんは、
5歳の岡田くんに言い聞かせました。
「新しいお母さんに可愛がられるようにな」
「新しいお母さんの言うことを聞いてな」
「新しいお母さんに口答えはあかんで」
「新しいお母さんが大事やで」
岡田くんは親戚の人の話をよく聞いて、
新しいお母さんのご機嫌を損ねないように
自分の気持ちをぐいと飲み込んで、
捻じ曲げて暮らした、賢い、いい子で、
5歳からずっと。
大人になっても、いつもどんなときも、
周りの人の期待のその上をいく生き方を
することになって、
いえ、その生き方しか知らなくて。
そしてついに、
作り続けた、
捻じ曲げて押さえ込んだ生き方が
ついに悲鳴をあげて、
リストカットを。
ご縁があって、お話を聞いて聞いて、
間違えたけど、苦しかったけど、
義理のお母さんとの間は平和だったから、
岡田くんの生き方が、
無駄ではなかったと思えるようになって。
お母さんのお墓にお花を持ってお参りして、ゆるやかに
新しい日常生活を取り戻すことが
できるようになりました。
結婚して、
一人娘のリナ(莉菜)ちゃんが
生まれましたが、
震災にあって、ママが癌で亡くなって。
岡田くんも40代で亡くなりましたが、
忘れ形見の岡田リナちゃんが、
どうしているかと気になります。
「つねこしゃちようさん〜。来た」
と、よく会社を訪ねてくれたのですが、
ふと思い出すと、会いたい思いがつのります。
「ずっと同じ家におるからね〜!」と。
もう20代になっていると思われますが、
訪ねてくれたらな〜と思います❤️。