第十五話 離したくない    ☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*








「…あ、翼は?」


沈下(笑)した男子に聞くと、梓を追い掛けたとのこと。


「…私も捜してくる!」


「おい真稀…」


「待ってこれから後夜祭…」


走り出した真稀は止まらずに、頭だけ振り向いた状態で


「…ごめんっ!羊、哉太………今は梓のとこに…」







ドンッ








「…うわあっ……」



何か人に当たった?







…状況説明しよう

正しくは当たったのではなく…






抱き締め、られたのだ

…………錫也によって








「…行くな、真稀」


今にも泣き出しそうな声で呟く錫也


「でも…梓が…」


そう言うと抱き締める力が強くなった





「……行くなっ!」






止まらない

………真稀への、




''想い''が





いつも従兄弟を…


木ノ瀬を優先するのは


しょうがないことだって


自分に言い聞かせてた



でも…


もう限界、だ…


耐えられない…



「………錫、也…………」



あまにも切羽詰まった声いろで紡いだ言葉は意味がわからなくて…



真稀は錫也の腰に腕を回した。



とにかく…錫也には笑っててほしくて…




「わかったよ…」



「…真稀」



嬉しくて、真稀を離すと…涙を流していた。





自分の気持ちに反する心はとめどなく流れ出す涙を止めてはくれな
い。



「…っおい、錫也!」


哉太が錫也に殴りかかった。


周りがざわざわと騒ぎだす。


直ちゃんがこっちに来た。


「…やめろ、七海!」


尚も殴り続ける哉太


「…哉太っやめて………!」


月子ちゃんは哉太に抱きつくが直ぐに離されてしまう。


錫也は哉太の胸ぐらを掴み返し、頬に一撃をお見舞いした。


「ぐぅっ…………てめえ……っ」



錫也は哉太の拳を止めた。









「…哉太だって、







嫌なんだろ。」









図星で、息が詰まる思いになる。




「哉太だって、真稀を一人占めに…木ノ瀬に渡したくないはずだ!



だって………お前だって真稀のことが好きで………

「…錫也!お前のことっ………見損なったぜ!

 ………確かに、俺はこいつがっ……大切だっ……渡したくねえ!

 それにてめぇが真稀を好きなんはわかる…渡したくねえ気持ちも!

 けどよっ……好きなやつのことを泣かしてんじゃねえよっ




こいつは本当に木ノ瀬を心配してんだ!」




錫也の胸ぐらを掴み、右腕を引いたその時―――――――




「哉太…っ」



真稀は哉太の右腕に抱きついた。


ピタリと動きが止まる。


「…やめて、哉太………もういいよ…私、が…はっきりしないのが…


「違うっ」



哉太は真稀を抱き締めた。



「行くぞ、真稀」



「っえ…?」


そのまま真稀を姫だきにし、梓が行った出口へ走り出した。






「最低、だな・・・俺・・・」







離したくない

けど

泣かせたくない



この気持ちは


上へ上へ続く



”spilell"