ロマンチストの豚 | 黒色すみれ・ゆかオフィシャルブログ「マザーグースの天窓」Powered by Ameba

黒色すみれ・ゆかオフィシャルブログ「マザーグースの天窓」Powered by Ameba

黒色すみれ・ゆかオフィシャルブログ「マザーグースの天窓」Powered by Ameba

image

4月の銀座の演奏会、ミウィ橋本でのインストアイベントを終えた後、個人的な大舞台がありました

わたしの声楽の恩師・関定子先生が師事する声楽のプロ集団「リラの会」の「試演会」。
僭越ながらわたしもその会の末端に加えさせて頂いております。
試演会、というのは声楽のコンクールやオペラのオーディションを受ける方達の本番に近いリハーサル・・・です。
わたしはコンクールを受けるわけではないのですが、「舞台で歌う」経験を積みたい会員は積極的に参加して良いということになっているのです。

黒色すみれでいっぱい演奏会をやっているのだからもう充分じゃない?という声が聞こえてきそうですがトンでもない

この試演会は黒色すみれや今まで経験してきたどの舞台とも種類が違います。

まず、会場は響きの良いホール。もちろんマイクはなし。
客席には採点をして下さる関先生と、リラの会のプロのみなさん。
これはね、かなり緊張しますよ。
コンクールのリハーサルなのだから当たり前か。
でもね、これはわたしにとって必要な緊張だと思っています。
いつもは応援してくれている十字軍隊員たちの前で、楽しく演奏しているだけのわたしですから。
アウェーであることに強くなりたい。
一曲目の一声目に出す声をピークに持っていけるコントロール力が欲しい。
舞台に一歩踏み出せば覚悟を決めて、背筋を伸ばして、「わたしは"せかいいち"の歌手!」と暗示をかけて客席に微笑みかける。
怖い、けれどこの瞬間がたまらない駆け引きであるのです。

両方の世界を体験出来ている自分の環境に感謝。


そして今回は三曲歌わせてもらいましたが、その中にやなせたかしさん作詞、木下牧子さん作曲(覚えやすく美しい旋律と可愛らしい曲調が特徴の作曲家さん)の「ロマンチストの豚」という歌がありました。

やなせたかしさんは「アンパンマン」の作者として有名な方ですが、日本歌曲の歌詞も数多く書かれています。
「ロマンチストの豚」もとても可愛らしい曲ですが、練習するにつれて、見たままの歌詞ではない世界がわたしの中に現れました。

「モンスター」(百田尚樹・著)という小説を読んだことがありますか?
醜く生まれた女の子がいじめや差別をバネにお金を貯めて、ついに美容整形して美しく変身し、自分の住んでいた町とは遠く離れた地で新しい生活をしているという話。(ざっくりですが)

「ロマンチストの豚」の歌詞の内容。
醜く貧しいけれど、ロマンチックな幻想を抱いていつも健気に前向きに生きている豚がいました。
ある晩、豚の背中に白い翼が生えてどこかへ飛んでいってしまった。
それっきり、その後豚がどこで何をしているか消息がつかめない。

この「ロマンチストの豚」が「モンスター」の主人公とバッチリ重なってしまって、わたしの中では整形手術で美を手に入れた女の歌となっています
普通に歌ったら陽気で楽しいのですが、どうしようもなくグっと胸にくる歌になってしまいました。

さち隊長もこの歌をすごく気に入っているのでいつかすみれの演奏会で披露するかも。
その時はこの話を思い出してぜひ聴いてみて下さいな。

追:画像は伴奏をしてくださったピアニストの藤木明美さんと。
クラシックからオリジナルからタンゴまで弾きこなすリラの会の天才ピアニストです