ここ最近なぜか「美味しんぼ」(小学館・ビッグコミックス)を読み返したくなって、巻数バラバラに気になるテーマの巻だけ買い直して読んでいたりするせいで、しょっちゅう思い出すのがこの本です。

 「美味しんぼ」の海原雄山のモデルが北大路魯山人ということで、「美味しんぼ」好きな人は一度、wikiで魯山人を調べてみると面白いと思います。複雑な出自のせいか家族にめぐまれず、6度の結婚に失敗し娘も勘当してしまった・・・というあたり、雄山以上の凄まじさを感じます(私はまだ読んでいないですが、雄山は山岡さんと和解し、孫ともうまくやっているらしいので、「美味しんぼ」作者がせめて漫画の中だけでも魯山人モデルの登場人物を幸せにしてあげたかったのかもしれません)。


 さて、この「料理王国」ですが、上記のイメージで読むと魯山人がとても真っ当で食を心から愛し、そして何よりユーモアのある人物だったんだなあと良い意味で裏切られることでしょう。
 味のわからぬ者や驕った料理人、テレビの料理番組のいい加減さに腹を立て、絶対許すまじといった厳しい態度の魯山人ですが、「料理」というものの本質を、小噺を混ぜたりして本当に単純に伝えようとしているのが伝わってきます(「料理する心」について、繰り返し何度も書かれています)。
 私が好きなのは、「狂言『食道楽』」。目、鼻、口、耳、手、胃、心が「たべるという行為では自分がいちばん大事だ」と争うが、結局心が楽しめなければ味わうことはできないというオチになるというもの。
 料理は苦手な私ですが、まずおいしいものを作ろうという気持ち、実行することが大事だなあと思い、この本を読んでからキッチンに立つことが増えました。

 ちなみに、これ以外にも魯山人のエッセイを何作か読んでいて驚いたものがあるので最後にご紹介。
「素人製陶本窯を築くべからず」というもので、webでも読むことができます。ようは、前山さんという鑑賞家が自宅に窯を作って職人に製陶させようというのを何ページにもわたって批判しているのですが、これが大変なしつこさ!・・・おいおい。
 「前山久吉さんを激怒せしめた私のあやまち」とサブタイにもつけ、文中でも前山さんを罵倒したことを後悔していると書いているにもかかわらず・・・。
 この調子で説教されたらさぞ家族は辛かったろうなとつくづく思ったのでした。


春夏秋冬 料理王国 (ちくま文庫)/北大路 魯山人

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 久しぶりの更新です。今日はパソコンが落ちませんように・・・と祈りつつ書きます。

 さて、今回は自分で購入したのは初めて(!)というハヤカワ・ミステリ。なんでも、長年装丁を担当されていた方が亡くなったそうで、カバーがガラリとリニューアルされました。ハヤカワ・ミステリなのに可愛い表紙・・・ということで、ジャケ買いです。

 時は1942年のロシア、ドイツ軍に包囲されたレニングラードに暮らす少年レフ。死んだドイツ兵から略奪しようとして
警察につかまり、命を助けてもらう代わりに出されたミッション・インポッシブルが・・・「大佐の娘が結婚式を挙げる、そのケーキのために卵を手に入れること」。
 レフは運命を共にすることになった、口達者で下ネタ好きな若者コーリャと不思議な一週間を体験する。

 とまあ、あらすじはこんな感じなのですが、とにかく食べ物がなく皆が飢えた状態の中、図書館キャンディ(本の表紙を引きはがして製本糊を煮詰めたもの・・・)でひもじさを紛らわしたり、人食い夫婦に襲われそうになったり、やっと手に入れた鶏が雄鶏だったり(笑)ととんでもないエピソードが次々に繰り出されます。
 惨たらしい死体があちこちにある「日常」を背景に、希望も見いだせないような状態でありながらの冒険。兄貴分のコーリャが女性経験のないレフに、あることないこと女の子の話を吹き込んだり、口を開けば下ネタを連発、といったキャラで、全編通しての作品の雰囲気は非常に明るく軽快で、グイグイ引き込まれてしまいます。

ラストがまとまりすぎかな~、というところがちょっと・・・でしたが、面白く読みました。

卵をめぐる祖父の戦争 ((ハヤカワ・ポケット・ミステリ1838))/デイヴィッド・ベニオフ

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 前回の北尾トロさんのエッセイを読んでいたら、笑えるエッセイが続けて読みたくなって手にとりました。
 ビル・ブライソンさんはアメリカ版清水義範といっても過言ではない!爆笑もののエッセイ集です。残念ながら知名度はイマイチで、すでに絶版だったりします。

 内容は、イギリスで20年過ごした著者が、アメリカに帰ってきてみたら「あれ?アメリカってこんな変な国だっけ?」と様々なところでカルチャーショックを受けまくる(イギリス人の妻よりも!)様を、面白おかしく描いたコラム集。
 買い物天国で、気が狂いそうなほど過剰なサービス、食べ物はジャンクフードだらけ、誰も歩かない(道の向こうの本屋に行くにも車に乗る)!など、日々の驚きを自分の失敗談を交えつつ、記しています。デンタル・フロスの容器に24時間対応のホットラインの番号を見つけては、「不安そうな声の男が『フロスを買ったんだけど、どうしたらいい?』と電話をかけている情景が頭から離れない」とすかさずつっこむ。
 
 この本を読むだけでなんだかアメリカ文化が少しわかったような気になってしまうのが恐ろしい感じです。「ああ、そうそう、アメリカはそうだよね」とか言ってしまいそう。行ったこともないのに(笑)。
 



ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー (朝日文庫)/ビル ブライソン

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 初ブログです。
 書店員のくせにここのところめっきり読書量も減り、読んだ本の内容も覚えていない(泣)ので、読書日記でもつけようかというのが発端です。しかし、こんなに簡単にブログって始められるものなんですね。

 さて、読書日記の最初の一冊は、北尾トロさんのエッセイ「全力でスローボールを投げる」。
 北尾トロさんといえば、映画にもなる「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」の著者で知られています。しかし、帯に「ガラスの50代」とあるようにけっこうなお年(失礼?)なのですが、とにかく何でもやってみないと気がすまない性質でお見合いパーティーに行ってみたり、ライターのくせにエッセイ教室とは何ぞや?と通ってみたり、子どもの頃食べたパンが無性に食べたくなって新幹線で大阪へ向かったり・・・他にも山登りとか、ひとりラブホテルからひとりカラオケといった敷居が高いものから、妻に「ありがとう」を言う、なんてハードルの低いものまで、まさに「思いついたら片っ端から」やってみるという感じ。
 私は、トロさんの著作の中では「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」が好きなのですが、この当時30~40代だったトロさんは「ソバ屋でまずいとはっきり言う」「人前で自作の詩を朗読する」「初恋の人に好きだと言う」というような、やってみたいけどなかなかね、ということをやりまくっています。
 人間、基本スタンスはそう変わるものではないのでしょうが、今作は「趣味といわれるものを体験する」話が多い気がします。よく言われる「50代から男性は定年後の趣味をさがす」というのが表れているのか?と思ってしまったり。トロさん自身は定年は関係ないかもしれないけど、まわりの友達の話題なんかモロにそうなのかも・・・と思ってしまう。
 つまりこの本は定年後の趣味をさがしている人たちに、「先に僕が体験しといたけどこんな感じだよ」というメッセージも込められていたりするかもしれません。

 なんて、最後セールストークみたいになってるのが職業病っぽくて嫌だなあ。

全力でスローボールを投げる/北尾 トロ

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キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか (幻冬舎文庫)/北尾 トロ

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