ずっと見たかった大評判の韓国映画。

51歳の新人監督アン・テジン、「毒戦BELIEVER」のリュ・ジュンヨルと、あのユ・ヘジンさんを主演に、李氏朝鮮時代の宮廷を舞台に撮った作品です。

 

ちょっと、朝鮮の歴史がほぼわからないのですけど、1645年?とテロップが出てたので、日本だと江戸幕府3代将軍?くらいの時代なんでしょうか???

とにかく、ユ・ヘジン演じる国王・仁祖の公式文書「仁祖実録」に、「世子(皇太子。次の王)が7つの穴から血を大量に流して怪死」と残されている、と。そのネタは本物で、多分、去年のネットフリックスオリジナルドラマ「シュルプ」も、同じネタから立ち上げたものかなと思うんですけど、とにかく、世子の怪死ということだけが史実で、あとは全部つくりごとらしいです。

そしたら、普通、時代劇が先にあったのかなと思ってたんですが、そうではなくて、監督がいうには、最初のアイデアは「盲人の秘密」で、別に全然現代劇かもしれなかったと聞いて、ちょっと驚きました。

 

わたくし、中国も韓国も日本も、わりと時代劇大好きなので(衣装や建物や調度品が)、この作品が李氏朝鮮の時代劇でほんとう==によかったです! 現代劇だったら、ひょっとしたら、ここまでヒットしなかったかも、だし、とりあえず私は見に行かなかったかなーー。

 

「盲人の秘密」とは、

一言で言えば、「本当は見えている」ということです。

なんじゃそりゃ! という話ですが、完全に見えてるわけじゃなくて、真っ暗闇だと、う〜〜〜〜〜っすら見えるという程度。朝になって日が昇ると何も見えなくなるというのです。そんなことってあるんですね。まあ、完全に盲目ってよりはいいとは思うんですが、後半「見えてるのに見えないフリ?」というフレーズがいろんな人の口から飛び交ってました。

たしかに。見えてないと思うからこそ、周囲の人は油断して、眼の前で殺人を犯したり、不倫したり、本当に人間ってやつは。。。。て感じ。が、実は暗闇では見えていて、「盲人が殺人を目撃してた!」というのが、この映画を一言で表す話だと思います。

夜が明けるまでに、すべて始末して解決してしまわないと、見えなくなる!!!!!

というタイムリミット感が面白くて。

大急ぎでやることやるけど、結局、ぱーーーーーっと太陽が昇ってしまう時間になり・・・・

いや〜〜〜〜劇場で見てる私達も、それまで真っ暗闇の画面が続いていたために、あの朝日が登ってきたシーンは眩しすぎて眩しすぎて、「うわ〜〜朝が来た〜〜〜」って、身体でストーリーを実感しました〜〜〜〜。

 

 

なぜ、そんなフリを? という問に、彼は、

「貧しければ貧しいほど、見えないふりをせねば生きてはいけない世の中」というのがあって、

思わず、膝を打ってしまいました。

まさに。まさに。

世の中が腐ってる時代、ま、今の日本なんかも、実にそんな感じなので妙〜〜〜に納得してしまったのですが、トップが腐敗して悪いことばっかりしてると、庶民は、「見ないふり」「聞こえないふり」「知らないふり」をするしかないっていうのは、すごい真実だと思いました。

 

あと、もともと時代劇にこだわってできたストーリーじゃないので、ものすごく中身が現代的。

「シュルプ」もそうですが、この時代、きっと王様は全然権力がなくって、領様?という高官が王の首をすげかえるくらい権力があるみたい。いや、しかし、それにしても、一応絶対王政だというのに、王様、力がなさすぎ。というか、下々のものまで「証拠を揃えて真実を訴える!」ということに躍起になっていて、なんというか、根幹の考え方が民主主義なんですよ。正しいことを訴えれば、王も廃止できる、くらいに、皆思ってるところがもう・・・・・そういう時代なのか、それとも、現代劇っぽい映画だからそうなっちゃうのか。。。。

 

ま、そんなことを思いつつ、本当だったら、あっという間にも首が飛んでいたであろう盲人は、幸運にも生き残ってくれたので、ほっとしました。世子の息子も生き残ったし、どうやら、本当の弟も元気でおられたみたいで。。。何よりです。

 

主演に、リュ・ジュンヨル。とってもよかったです。

失礼ながら、ものすごいイケメン!!というタイプじゃなくて、日本でいう柄本兄弟タイプなのがいい。(てことで日本リメイクするなら、ま、しないだろうけど、するとしたら柄本時生しかいない)これ、イケメンがやったら失敗する役ですよね。一見すると、いかにも気が弱くていいたいこともいえない。っていうふうに見えないといけなし。

ちょっと目が離れていて、でもすごく背が高くて(183㌢)、年齢不詳なところもいい。

あと、ユ・ヘジンおじさんも、ほんとによかったです。あの人、王様みたいな役、実は向いてたのかも! 別人かと思うくらいよかったわー。今後、こういうのもっとやってほしいです。実力者ですねえ。

 

韓国人の子供は、歴史の授業で、歴代王朝を学ぶと思うんですが、あちらも大変ですよね歴史が長くって。

李氏朝鮮の後半、こういう仁祖前後などこまでわかってるか想像もつかないけど、でも、私達日本人よりは、確実に、基本的背景とか情報はあるんだろうから、こういう映画をみても、感想が違ったりするんだろうなあ。

その韓国で、ものすごいヒットした!っていうんだから、基本的に韓国人って、「王であろうと悪い奴は絶対に許すまじ!」って気持ちが本当に強いんだなあ。と思いました。