私だけじゃないと思いますが、

「悪女」というタイトルの映画や小説、ドラマがあると、積極的に見に行ってしまう人多いと思います。

こちらは、去年夏に制作された台湾映画の「悪女」。

なんの前情報もなしに、ついつい見てしまったのですが、これが、なんと、

開始20分くらいすると、

 

「こ、こ、これは、木嶋佳苗やないかーーーい!」

と叫んでしまうという映画だったのであります!

 

木嶋佳苗といえば、そうだなあ、もう10年いや15年くらい前になるでしょうか、

お金持ち(?)だったかそうでなかったか忘れましたが、高齢のおじいちゃんばかりを狙ってつきあい、

すぐに結婚の約束をとりつけ、御飯作ってあげたりデート行ったりしてるうちに、練炭で殺されてしまう、と連続殺人事件の犯人。

 

当時、ものすごく話題になったのでとても良く覚えています。

なぜ、あそこまで騒がれたかというと、モテを利用して連続殺人事件を起こしたその悪女が、絶世の美女というならともかく、わりと、その、そうでもない、というか、いやどっちかというと、そこまで若くもないしぽっちゃりしてるしうーん、そこまで顔の道具が整ってない、という感じの方だったからだと思います。

「なぜ、この人がそんなにもモテまくったの?!」という興味の部分が大きかったのかと。

でも、よく話を聞いてみると、高齢者の方々とはいえ、モテてたというのは本当の話で、誰もがぞっこん。木嶋佳苗は、自己申告の「絶世の美女」だったとはいえ、身につけているものは高価で美しくセンスのいいものばかりだし、言葉遣いや物腰はとても上品、加えて非常に教養深くて、料理やお菓子作りのスキルがすごい。そして、これは裁判でもはっきり言ってのけたことですが、「私は、男の人を喜ばせる身体をもっているし、さらにそのテクニックがすごい」ということでした。

私は、当時、彼女が長らくやっていたというブログを、なんと、削除される前に一回だけ見たことがあったのですが、本当に写真と文章だけを見てると、「どこのマダムが書いていらっしゃるのだろう。。。素敵。。。」と思わずにいられないような内容だったと思います。自己顕示欲もあったのでしょうね、自分の写真も載ってましたが、口元中心のアップで、全然ブスでもないしなんだったらすごく美しく上品に写ってたと思います。

「私は何もしていない。だた、私がモテまくってただけだ」という主張も、あながち嘘じゃないのでは・・・という空気も濃厚だったわけでが、結局、彼女には、死刑判決が下ったのです。

 

 

という、事件です。

当時、木島のような「自己申告の美人」とか「自己申告のセレブ」が、ちょっと流行り出した頃で、っていうか、彼女が広めたのかもしれないけれど、気がつけば、そういうSNSが随分増えてたような。。。そのほとんどが虚偽とはいいませんが、たしかに、「SNSだけだといくらでもそう見える」ということが確実にわかってきた時代。

いろんな人が、憧れの人生を実現したような気になって、自分に酔ってた時代だったんですよね。。。ま、今もいますけれど。

 

前置きが長くなりました。

台湾映画ですが、これは絶対木島の事件を意識してるだろう。と思ったら、なんのことではない、意識どころか、ちゃんとあれを引用したと公にしてる映画だったんですね。

それをやってる女優さんが、見事なぽっちゃりぶりだし、木嶋佳苗より全然年上っぽいのが、意地悪だなあと思いましたが、でも、ちゃんと、「実はいい人」「実は本当にモテてた」という役にしてあって、なかなかおもしろいのです。お料理も大の得意で、それが日本料理だというのがいいですね。

 

映画のヒロインは、この悪女に、我が父親がすっかり惚れ込んでしまって、あっという間に結婚までされてた、という美人キャスター。徹底的に糾弾して、刑務所にぶち込んでしまうのですが、実は、その後に。。。。という話。

台湾の映画もドラマも、何十年ぶりくらいに見ましたが、

なんというか、中国本土とはやっぱり違うんですねえ。当たり前ですけど。

どっちかというと、テンポ感が、日本の地上波ドラマに似てるので、このドラマ、このまま日本でドラマ化してもよさそう。

ただし、台湾ってきっと、今の日本よりずうっと景気がいいんでしょうねえ。見てるだけでそれがわかる。なんとなく、社会全体が潤ってる気がする。。そう、ちょうど15年くらい前の日本みたいに。。。

 

ネタバレですが、

結局、悪女のおばちゃんは、全然悪い人ではなくて、ちゃんと高齢者の面倒をみてあげてるだけの苦労人でした。

彼女のアリバイや犯行を工作して犯人にしたてあげた真犯人が別にいたのです。

すっかり騙されたヒロインちゃんが、それに気づき、遅まきながら、その復讐にでる。。。。という映画でした。見やすいし、普通に面白かったです!

 

あとから思ったこと。

世の中には、「なんで、あんな人がモテるんだろうね」とか「どうして、あんな人、人気あるの」ってこと多いじゃないですか。

今の日本は、殺伐としていて信じられるものがほぼないご時世なので「お金もらってるんじゃないの」「なにか弱みを握られてるのでは」みたいなことばっかり思いがちですが、

必ず、モテとか人気には「それなりのわけがある」ってことなんだろうなあと、改めて思いました。

脅迫とかじゃなく、もっと、こう「その人にしてみたら、ものすごく嬉しい言葉」とか「そういう人には、たまらなく有難い心遣い」みたいな。。。誰もわかってくれない気持ちに共感を示してくれた!ってことが、どれだけ嬉しいかってこと。

看護師さんとか介護士さんなど、やっぱり、普通のひとよりそういう部分がよくわかってらっしゃるだろうから、気が付きやすいんだろうなあ。きっと、私自身も、気がついてあげられてないと思う。

 

日本語の、「悪女」という言葉は、

何十年も前、有吉佐和子さんが初めて使ったといわれているそうです。

去年、NHKでドラマ化もされた「悪女について」(田中みな実主演)ですね。

あの小説もそうですが、もしかしたら、悪女っていうのは、そういう普通のひとだと、なかなか気づきにくい寂しい人やつまんない人の気持ちをよーーーく見えてしまう人のことかもしれませんねえ。