韓国のえっぐい殺人事件の映画を見ていると、実話ベースであることが多い。しかも、その数がすごくて、あれもこれもそれも大体「えっまさかそんなことが?」と思う事件はほぼ実話ベースなのです。

なので、私は、常々、

「おいおい、韓国って、どんだけえっぐい事件ばっかり起きてんだっ!」 と思ってきたのですが、これは殺人事件もの(でも殺人はいっぱい起きる)ではないのに、実際に起きた事件だというじゃないですか。。。えっぐい。。ひょっとしたら連続殺人事件より、えぐいかもしれない。。。。そんなことある?って絶対思いますよ、見たら。「えーーーーっ」っていいますから。3回くらい。

ということで、作家さんが頭を捻って考えられるようなことはやっぱり限界があるんだな!実際に起きてしまった事件って、ほんと斜め上を行くよね・・・「事実は小説より奇なり」とはよくいったものだわ。。。

ということを100回くらい思ってしまった映画、です。

そして、この作品が映画デビューとなるパク・ユチョンは、これで最優秀主演賞?新人賞?をいっぱい獲ったとか。作品自体もたくさん受賞したらしいけど。「そうでしょうとも」と納得しちゃう体当たりのすごい演技。私は彼の作品をほかに1作しか見てないのでよく知らなかったんですが、ユチョンって、こんなに芝居が上手だったんですねぇ。今頃すごい感心しちゃった。

あと、船長がユンソクさん、てのが、絶対この映画の成功の理由だと思う。ユンソクさんて、「哀しき獣」で斧を振り回してた人ですが、どの映画でも「もともとこういう人」という気がして、ほんとにすごい! 偶然「哀しき獣」も朝鮮族の話ですが、中国人だけど皆さん韓国語話せるっていう、独特の立場だからこそ成り立つ話なんですよ。中国人も韓国人もあの頃本当に経済危機とかで大変だったみたいです。その、ユンソク船長ですけど、彼が「殺すしかない」といえば、見てる人全員「そりゃそうですよね」と納得してしまう。なぜか「正しいことをいっている」気がするから不思議です。絶対的に強い。存在が強い。

古いとはいいませんが、そこそこ前の映画なので、ネタバレしてもいいようなもの。ですが、何も知らずに見たほうが絶対面白い作品なので、3回の「ええっ!!」のうち、最初のネタバレだけ。

 

超貧乏な漁船が舞台なんです。魚が全然獲れなくて。で、船長のキム・ユンソクさんはとうとう、中国の朝鮮族を自分の船で韓国に密航させるというリスキーな犯罪に手を出すんです。

(言っときますが、画面は常に暗い。そして船上は非常に汚い。全員顔も服も汚れっぱなし。てことで最高に不衛生。その中でのぐちゃぐちゃ2時間)

何人か(30人くらい?)の密航者を海上で無事に貰い受ける。まではうまくいったものの、海上パトロールの巡回船がきちゃったんで、その時だけ魚槽(とった魚を入れておくところ)に全員隠れてもらったところ、なななーーーんと、漏れたフロンガスを吸って、全員死亡してしまうという状況に。「ええーー!」これが1つめ。

仕方なく、全員の遺体を海に捨てる船員たち。が。実は、ユチョンが一目惚れしてしまって最初から何かと特別扱いしてた女性1人だけ、別の場所で生き残ってた!韓国に上陸後、その女がべらべら真実を喋ってしまってはやばいので、船長以下船員たちは、その女を探しだし殺してしまおうと躍起になるんです。それをさせまいとするユチョン。絶対許さない船長。とにかく女と一発やりたい船員、気が狂ってしまう船員。。。てことで乗組員6人の思惑がバラバラになり、仲間割れ。なななーんと殺し合いに! これが2つめ。

 

あ、2つ目まで書いてしまいました。

でも、まだまだ惨劇は続きます。もうめちゃくちゃ。3つめはなんだろう。あ、そうそう、誰が生き残るかってことです。そう。全員死亡ではなく、生き残るひとがいるんですよ。誰でしょう?

 

最後の最後の最後まで面白いです。気が抜けない。

漁船の話なんて、さすが実話!と思ってしまうところですが(だって考えつかないもの)、これ、どこまでが実話なんでしょうか。まさか、全部が全部、あの最後のエピソードまで実話じゃないような気がします。製作、そして脚本を書いてるのが、今や「世界のポン・ジュノ監督」で、彼の脚本っぽいんですよね終わり方が。あのエピソードが。うまい!話の持って行き方がとてもうまい。だから創作だと思います。最後は。どこから創作だろう。。。

あと、ユチョンの意図した演技なのか、それとも監督の指示なのか、よくわからないことの1つに、あれを本当の愛とかいわれるとちょっと。て感じがしました。

あの女性が船を渡ろうとする前から、ユチョンはもうひと目ぼれしてたんですよ。なぜ、そこまで!という感じ。顔でも性格でもないし、そんなに最初から彼女に肩入れする動機がわからない。魔が差したのかな。その愛し方があまりに極端で、彼女がずっとドン引きしてたのも「ごもっとも」と思うほど、ぐいぐいなんです。ちょっと狂気めいた愛情を感じてそれも怖かったです。

実は、彼女は船を渡るとき、唯一失敗して海に落ちたひと。みんなが「あーあ」と諦めモードだったのにユチョンだけが、迷わず海に飛び込んで彼女を助け、船に上げるんです。いわば、命を救ってくれた恩人。そこまでしてくれたひとなので、身体を許すことを始め、何かと彼のいうことを聞いて当たり前なのに、結構、偉そうだし、彼女はユチョンに懐疑的というか、やっぱりドン引きし続けるんです。2人の最後をみればよくわかるんですけど、よっぽど嫌いだったんでしょうねえ。命の恩人なのに。

 

いや〜〜、いろいろ考えさせられるけれど、どっからどう考えても面白かった。

やっぱり、ポン・ジュノ氏は、世界に出るべくして出ていった真の実力者だったんだなあ。すごい。

ちなみに、これも実話の名作「殺人の追憶」では、ポン・ジュノが監督で、シム・ソンボが脚本(ポンと共同執筆)を書いています。本作は、その時とは逆で、シムさんが監督でポンさんが製作と脚本。最後の最後の描き方は偶然にも似てましたね。

 

 

さて。そういえば、ユチョンさん、

2〜3年前に、覚醒剤疑惑、婚約騒動、引退宣言、有罪騒動・・・・と、連日めまぐるしいほど会見続きで、すごく騒がれてましたけど、あれって結局どうなって、今、どうされてるんでしたっけ。

歌とダンスはともかく、ここまで芝居が上手な方とは知らなかったので、もし、引退されてないのなら、なんとかまた、映画ドラマ方面でご活躍できるといいですね。。。

あっ、最後に教訓としては、女性が船に乗るときは何かと気をつけないといけないってことですね。船は大きな密室。逃げるところがないわけなので。。