監督 キム・ジンミン 全12話

 

【あらすじ】

父親が目の前でいきなり銃殺されてしまったジウは、犯人を捕まえて復讐したいと思うが、あまりに非力で何もできない。そこに、麻薬組織会長ムジンから、「そんなに復讐したいならうちへ来い、強くしてやる」といわれ、組織のジムで鍛える。5年後ムジンは、強くなったジウを警察官として潜入させる。父を殺したのは警察の誰かだと聞かされていたジウは、麻薬取締チーム長のチェギホではないかと疑う。一方チェギホの方もジウの身分を怪しむ。ムジンの秘書テジュは、ジウが寝返ったのではないかと疑う。5年前、ジムでジウをレイプしようとして追い出されたガンジェが、ムジンとジウに復讐しようと決起する。ムジンは瀕死の負傷を負い、ガンジェはジウの本名をいおうとしてジウに射殺される。翌日、ガンジェからの手紙で、父親が警察官だった写真を見て驚愕するジウ。チェギホが組織に送り込んだスパイだったというのが真実なのか? ムジンがいう「それは罠だ騙されるな父親は俺の親友」が真実なのか? どちらにも猜疑心を抱いてる中で、チェギホがテジュに襲われる。真実を喋られる前に、ムジンが片付けようとしたのだが、意識をなくす前に、ジウは、父親が潜入警察官だった証拠を全部手渡される。父親を殺したのはムジンなのに、ずっと騙されてきたとわかったジウ。たった1人の理解者であるピルトも殺され、いよいよ、復讐心に火がつく。

 

【感想】

ひじょ〜〜によくできた作品。1話60分を超えない(たしか)長さもよかったし、全12話というコンパクトさもよかった。これがもし15話とか18話くらいあったら、恋愛の部分とか、亡くなった父親が警官だった頃の再現シーン(それ見たかったな)などを丁寧に入れてくるものと思われるが、とにかく、必要最小限のことだけをポンポンそっけなく描写して、どんどん進んでいくところがよかったのだと思う。

登場人物がこれまた、必要最小限で、絶対に必要な役だけが厳選されてる感じ、そして、それぞれのキャラづけがひじょ〜〜〜によくできていて、すべての人に共感しやすい部分を持たせ、伝統的韓国ドラマにありがちな「全部悪」という役がない。結果、全員が愛おしい。

 

 

ハン・ソヒ(ユン・ジウ/オ・ヘジン役)

「夫婦の世界」「わかっていても」ときて、どーんと体当たりアクションに勝負。

ハン・ソヒ大好きなんですよ。南方系の美人大好き。眉も瞳も濃くて、やたら毛量が多くて唇がぽってるしてる系の。まさか、あんなにモデルモデルしてる美人が?!と驚いてたけど、本当によく頑張ったと思う。10キロ増量してトレーニングに励み、4ヶ月の撮影期間では、過労と怪我で何度か失神して救急車で運ばれたとか。ひーー、ドラマさながらの過酷さ壮絶さですね。拳銃なら早いのに、このドラマ、基本のアクションが拳闘なんですよ拳闘。次にナイフ。なので、本人がある程度やらないと撮れない。なのに、ハン・ソヒ自身が西洋人体型(いかり肩で脚細長)なので、10キロも太ってるのに、まだ脚が細くてスマートなのはこの役には裏目に出た感じでした。それだけ増量してこの腕の細さ?なにこのお腹は?って感じ。正直、貧乏で孤独で野ざらしって感じが薄かったんだけど、髪はパッサパサだし肌がもうぼろぼろで顔色もひどいもので、その辺は身体を張ってやっただけのことはあると思う。これだけ極端な役だったので、演技力がどうのというレベルではないけれど、もともとの抑えめ控えめの芝居が生きたともいえる。折角の美貌とスタイルを生かして、最後のお墓参りシーンくらいは、きれいにめかし込んで別人みたいになった、美女ジウを見てみたかったです。

 

パク・ヒスン(チュ・ムジン役)

めっちゃよかった。すごいよかった。

この方よく存じませんが、金子賢みたいな顔と身体と声に、常に冷静さと堂々とした態度がすごく似合ってお上手でした。もう50歳くらいだと聞き驚き。見えない。若いなー。(これは自慢なんですが笑私は第1話でははーーんこれは真犯人お前自身やろって見破ってしまったのでそう思いながら見れて面白かったです)

普通、ラスボスだと最後の最終決戦まで無傷(そして最後は死ぬ)で威張ってるだけ、が多いけれど、このドラマはそういう人誰もいない、そこも素晴らしくて、ムジンもガンジェにやられて死にかけてるってのがドラマとして効いてる。「俺は誰も裏切ったことがないのに、みんな俺を裏切る」っていうセリフも深い。確かにそういうこの人のまっすぐなところがこのドラマのミソ。そもそも、この人がジウを拾って育てる気になったことがすべての始まりだけど、それもちょっとひっかかるというか。父親のドンフンへの異常なまでの傾倒や、娘ジウへの深い信頼など、根っこは不器用なくらいまっすぐで素直な役柄なんだよね。ドンフンへは友情というか(「新しき世界」みたいな)ボーイズラブ?みたいなものも感じるし、ジウにも恋愛感情に似たものを感じる。あと、この人の、ドンフンに騙されてたことが発覚した時の凄まじい驚きと憎しみをもうちょっとだけ尺をとって燃え上がる感情をたっぷり描いてほしかった、それ見たかった。

結局、この人がすべてのはじまりであり、終わりなので。

 

 

サム・キンホー(チェ・ギホ役)

麻薬取締チーム長。つい先日「目撃者」を見たばかりなので、めっちゃ嬉しかった。韓国の大地康雄って感じの俳優さんですが、いやーーーいいですねえ。大地康雄超えかもしれない。ま、私目線ですが。

前半は、「この人が黒幕」だと視聴者に思わせて進んでいくわけですが、その辺の、「そうかもしれないしそうでないかもしれない」っていう、どうとでもとれるギホの言動演技が、びみょーーにうまいんですよ。私、第1話で真犯人わかってたのに、ところどころ「ん?ひょっとしたらギホが?」と思わせるようなところがあって、その微妙さがうまかった。そして、何もかもの真相を知っているのは、ムジンとギホの2人だけだったので、もう少し早いタイミングで真相をジウに伝えるとか、ジウにはいえなくても、部下の誰かに打ち明けるとかできなかったのかな?と思ったな。

 

 

イ・ハクジュ(チャン・テジュ役)

出ました。テジュ役。こんなに凡庸な役どころなのに、「何この人、うまいわーー」と唸ったら、「夫婦の世界」でぶっちぎりのDV男をやってた人だった! いいですねえ〜〜。

あの時も、「何この人めっちゃうまいわーー」と思って感心してた私。あれはかなりぶっとんだ役柄だったので、そのせいかなと思ってたけど、やっぱり、この人自身が上手いんですね。雰囲気もあるし。ラスボス・ムジンの片腕的な秘書で、常に冷静、常に従順という役。もちろん、やるとなればめちゃ強い。見た目も顔もかっこいい。アクションも上手だった。「私は長い間、ドンフンさんを近くで見てきましたが、組織にはそぐわない方だったと思います」というセリフが何度も何度も頭の中をぐるぐるした。あのセリフは5年後いろんなところで効いてくるほんとによいセリフなんですが、これを彼があの抑えめ口調でまっすぐにいうってのがいいんですよねえ。何度もみたいいいセリフ。秘書テジュとしてはすべてを知ってていろいろいいたかったのにぐっと我慢してのあのセリフ。はー今、私が何をいっても(見終わったばかりなので)、彼を絶賛することしかいわないのでもういわないけれど、ぜひぜひ今後大作ででかい役をやって、ぶっちぎりに売れてほしい! です。きっといろんな役ができると思うので!

 

 

アン・ボヒョン(チョン・ピルド役)

私はよく知らないですが、「秘密の森」に出てたらしいんで今後見ることになると思う。

背が高くて眼が大きくて丸くて、日本人みたいな感じで、見るからに「善人!」「若者!」って感じ。正義感が強くてまっすぐでまさに警官がピッタリな若者なんだけど、まさか、後半も後半、もうすぐ終わりっていう段にきて、ジウとできてしまうとは!! しかも、かなり強引かなり唐突な感じがしたんですけど、私ですかね?かなり違和感。でも、あの場面がないと、あのあとすぐピルトが死ぬのが活きてこないってことか。せめて、もうちょっと前から匂わせておいてほしかった。そんなにこの人、ジウに好意を抱いてましたっけ。むしろ敵意のほうが強かったような。

 

 

チャン・リュル(ド・ガンジェ役)

いやーーー。迫真の演技でしたね〜〜〜。

こんな爽やかな笑顔が似合う素敵な俳優さんがやってたとは思えないくらい、凶悪な役でした。このドラマに出てくる人ほとんどそうですが、すっごい鍛えてるんですよね。ガンジェもさすがNo.1練習生をずっとやってきただけあって、めっちゃ筋肉割れてましたよねえ。ほんとにプロボクサーのようでした〜。ほんとに、あんな力も技術もある人を素手で失神させるほどジウは強いのか、と思っちゃうくらい。普通は無理でしょどんなに鍛えても。常にテンションが高い役なので、大変だったと思うけど、役柄的には、やっぱりガンジェも共感ポイントがあって、「まあ・・わからないでも・・ない」みたいなところがありました。昔お世話になったムジンの薬事業を潰そうとして対抗するのは、別に、裏切りでも復讐でもなくて、うーん、一応、「顔を切られて追い出される」ってところで、ちゃんと禊は終わってるはずなので、その後、何をしても勝手じゃないかと思っちゃった。

 

 

ユン・ギョンホ(ユン・ドンフン役)

そして、父親役。

このドラマは、全体的にすごく良くできていて、余計なところは一切ないのに、どういうわけか、第1話だけがすっごく違和感満載なんですよね。それがもったいない。

「暴力団の娘」ということで、高校でも近所でも虐められてる女子高生ジウ。そもそも、母親の話が全く説明されない(イサギいいけど)し、ジウが孤独でかわいそうなのは伝わるのだが、常に、マンションや自分に警官や組織が見張ってる状況なので、それだけ父がやばい人物だってことでしょう?あの状況で父親が射殺されても、「だって、父親が暴力団なんだからそういうこともあるでしょ」と視聴者全員思っちゃうよ。てか、そう思わせるように描写してるじゃん。なので、ジウがどんなに犯人を探したい! とか、そいつに復讐したい! と思っても、全然ついていけないよ視聴者は。殺されて当然とまでは思わないけど、そんなに正義感もてないよね。ドンフンパパが「実は警官だったんです」ということがわかるのはずっとあとなのでこの時点では、ただのヤクザと思ってるから。

この方とキンホーさんは、警察の同僚で仲良しで一緒に潜入計画を実行してたほどの状況だったのに、その再現シーンがゼロなんですよ。共演ゼロ。スケジュールの都合かなんかだと思うけど、惜しい、この2人の俳優さんが一緒にやってる再現シーンを見るともっと話が入りやすいし、共感もできるんだけどなーー。惜しい。

芝居的には、もうこういう役はまかせて安心の「いいオッパ」「いい同僚」て感じで当たり前的によかったです。