エツコはその日、ジュンペイから呼び出しを受けていた。前夜、突然部屋にノックがあった。
「エツコ、いるか?」
エツコ、ジュンペイ、カッちゃんは今でも同じ施設内で暮らしている。カッちゃんとジュンペイに至っては同部屋である。
「なあに」
何故かこのときドア越しに話したほうがいいような気がしたエツコはドアを閉めたままジュンペイに応じた。ジュンペイもそのまま会話してくれたことにほっとしていたが、言葉が硬いのはジュンペイも同じようだった。
「あのさ。俺、ベースやることになった」
「えっ?あんな素敵な声なのに…「あっ、ジュンペイの声質が純粋に素敵だって言いたかっただけで、ジュンペイ自身を誉めたつもりはないっていうか」
「ちぇっ、分かってるっつーの。ハッキリいわなくてもよ」
「いやっ、だからといってけなしてる訳でもないからね」
「何を言ってるんだよ……まぁいいや。俺が話しに来たんだ。用件忘れちまうよ」
ジュンペイはそういうと、ひとつ咳払いした。
「ヴォーカル兼ベースやることになったんだよ。カッちゃんはギターに戻るんだ」
「ふうん。リードギターとリズムギターという編成にするのかしら」
「お前、詳しくなったな」
「伊達にマネージャーやってませんって」
そう言ったが、知識の大半は喫茶エスポアールでカッちゃんから聞いたものだということにチクリと胸が痛んだ。あれ?なんで苦しいのだろう…
「まぁ、そういうことだ。カッちゃんはリズムギターは、運指が速いシゲキに頼むつもり」
「……それを言いに来たの?」
「いや、これは前置きだ。俺とカッちゃんは、お前を賭けて勝負することになったんだよ」
Android携帯からの投稿