エツコはカッちゃんに助け船をもらおうと、そっと目配せした。カッちゃんの顔に戸惑いが浮かんでいることに気づいたがその理由までは分からなかった。
カッちゃんはエツコに見られた瞬間、そこまで見透かされたようで顔から火がでる思いだった。だが、嫉妬の渦は勢いが衰えず、胸が苦しくなる一方だった。
「……お前はどうしたいんだ、ジュンちゃん。俺たちのバンドと天秤にかけるようなことすんのかよ」
結果これが直情経行なジュンペイの火に油を注いだ形となってしまう。
「天秤だと?歌いたいもんを歌わせてくれる器があってはじめてステージにあがるかどうかじゃねーの?LAメタルやる根性のない奴なんざ、天秤に量る価値すらねーよ」
ジュンペイがそう吐き捨てた瞬間、エツコの平手が飛んだ。
「っ痛ってーな!」
「ジュンペイ、あんまりじゃないっ。私たちの絆はそんな軽いものじゃないはずよ」
「エツコ、これだけは言っておく。音楽に魂かけるんなら、一歩だって妥協しちゃあいけねーよ。絆なんて持ち出すなんて乳くせーこと言うな。少なくともロックにしろパンクにしろ、俺は魂というメッセージを伝える手段だと思ってる。俺は誘われた身だが一旦やると決めた以上、半端なチンカスになるつもりはないぜ」
エツコには分からないだろうとジュンペイは思った。カッちゃんはたんにビビってるだけじゃないか。もはや小夜のバンドなんてどうでも良かった。カッちゃんの目を覚まさせたかった。
だがジュンペイが背を向け店を後にしても、カッちゃんから呼び止められることはなかった。それはきっと、外が激しい雨だからではないはずだった。
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