6.夏樹(カオル)
はぁ。どうしたらいいんだ……。
こんなとき、本当に今の姿に後悔する。
今や俺は、薫と友達となっている。しかも、かなり親しい部類に入るだろう。東京には永莉がいないから、薫はよけいに俺にべったりとなっている。
「ね……ちゃんと聞いてるぅ?」
「イッちゃん、さっきから何度も同じ話を繰り返してるよ……。覚えちゃったわよ」
「イッちゃん」こと薫は、Bar Zion のカウンターでもう二時間もクダをまいていた。さほど酒の強くない薫だが、酔い潰れることは殆どない。最近は仕事に対するプロ意識でアルコール量をコントロールしているのだという。へべれけになって言われてもイマイチだが、確かに仕事に穴をあけてはいないようだ。
でもそれは、久遠駿一に会いたいからだろ?
ここまで喉にでかかるが、やめておく。自分の声色に自信がないからだった。特に今夜は薫の隣にまひるがいる。まひるは鋭い女だから、変な勘繰りをされてはかなわない。
まったく……。俺は、まひるという彼女がいながら、元カノの恋相談を受けている。さながら姿の見えない懺悔部屋で信者の懺悔を聞く女装変態牧師だ。
まひるに対する気持ちは本物だって信じてる。だけど、女装を辞めたら?と言われたとき、ドキッとしたのだ。
「いや……今さらかえらんねーわ。カオルのファンもいるし。まぁ、俺に悪い虫がつかないし、まひるにもメリットあんじゃん」
「嘘つき。薫ちゃんとの関係を失いたくないからでしょ?」
まひるは、カオルのウィッグをつけたままの俺の頭を撫でた。ラブホテルに入るとそうやってすぐに俺を押し倒す。いつもカオルとして抱かれているような錯覚に陥る。これも倒錯というのだろうか。まひるの白く細い指がするりとカオルの髪をすかし、そのまま下半身へと撫で下ろす。絶妙な這わせ方で俺の敏感なそれをしごき、すぐに爆発させる。ああ、俺は夏樹なのか?カオルなのか?気絶しそうになるほど溢れでる快感に溺れながら、俺はまだ薫との会話を思い起こしていた。
「イッちゃん、さっきから何度も同じ話を繰り返してるよ……」
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