17.夏樹
薫のやつ……。飲み過ぎ!!
見ている俺がハラハラするほど、まひるにコントロールされている。早々にマスターを潰されたこっちとしては薫にあることないことを吹聴されてはたまらない。いっそのこと薫も寝てしまえと、ドア一枚隔てた向こうから両手を合わせていた。
まひるは油断も隙もない女だった。いったい何を企んでいるのか見当もつかない。
「……ねぇ。あなた、付き合っている人いるの!?」
うお!!聞きたくねぇー!まず、俺はありえないし。でも、もしいないのなら嬉しいかもしれない……。
薫は絞り出すようにして、ゆっくりと答えた。
「うーん。いない……」
やった!!
「じゃあ好きな人は」
あうっ、今度も心を鋭くえぐる質問!!聞きたくねぇ聞きたくねぇ!!
「……いるよ……」
マジに聞きたくなかった。こんな盗み聞きみたいな場面で、分かりきってる答えだとしても。
アイツは俺をフッて東京に行ったんだ。俺のことなんか忘れて新しい恋をしていると思っていた。でも、見ないようにしていたんだ。俺……薫を追いかけて上京したわけじゃないと思っていたけど、どこかで諦められないでいる自分を知っていたんだ。
そんなことは分かりきっていた。だけど、夏樹として薫から直接聞きたかった。自分がみじめな小動物に思える。まひるはよかれと思っているのかもしれないが。
まひるは俺がこの部屋にいることを知っているはずだ。だから、こんな話を聞き出しているのだろう。これ以上、二人きりにさせたくなかったが、どうしようもなく時だけがじりじりと過ぎてゆく。
俺がようやく一息つけたのは、薫が酔いつぶれて寝入ってからだった。全身が強ばってしまっている。息を殺していたから、疲れた。長いため息をつくと、小さな声でまひるが俺に問いかけた。
「ね、いるんでしょ?カオル」
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