恋愛小説【俺様のナツ!!】41 | 相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

相武万太郎オフィシャルブログ「六転び七転び八転びROCK。」(音楽、小説、酒)

ベッキーがテレビに出てるとチャンネルを変えてしまう男が、好きな音楽や小説を語ったり書いたりらじばんだりしています。音楽は洋楽ロックメインだったが最近はハロプロ大好きです。特にANGERME。

11.薫




瞬く間に車窓はトンネルの闇に包まれていった。久しぶりの帰郷に胸が踊る。何度か目を閉じてみたが、寝つけなかった。


考えてしまうのは何故か夏樹のことだった。忙しい日々を言い訳にして考えないようにしていた。一昨日、考えないことが楽になれることに気づいた。なのに。



地元に帰るから?悩んでも仕方ないことなのに。凝ってきた首を振りながら、窓側のシートに体を預けた。窓に映る自分を見ながら、また夏樹のことを考えている自分に苦笑した。



東京駅で出会った自分と同じ名前のニューハーフ。どこか夏樹に似ていたな……。似ているようで似ていない。夏樹はやっぱり男らしくて、私を引っ張ってくれる強引さがあるのだ。一方の彼女(と呼べばいいのだろうか)は一見して控え目で、これまで苦労してきたのが身だしなみにも表れていた。


「良かったらお礼させて下さい。あなたがいなかったらコンタクトレンズは、見つからなかった……」


至極当たり前のことを言ったつもりだったが、カオルはひどく狼狽していた。


「い、いえっ、お礼されるようなことは何もしていないんで」


「でも私の気持ちがすみません。あなたの貴重な時間を使わせてしまったのだし」


実際、一時間近く探していた。下を向いていたものの、彼女といてもなぜか気疲れすることがなかった。人見知りする私には珍しいことだった。ニューハーフに最近縁があるからなのか…才能があるのかなとか意味不明なことを考えていた時ちょうどレンズが見つかった。思わず顔を見合せ、二人で笑いあった。



女である私は本来、ニューハーフを語る資格すらない。なのに、夢を実現させるために出生を偽らなければならない。この選択はこれまで大きな嘘をついたことのない私にとって勇気のいるものだった。だから、彼女に出会った瞬間はひどく緊張した。だがしばらくするとまったく気にならなくなった。ひどく居心地の良い時間だった。そういう意味では、夏樹と彼女は似ているのかもしれなかった。



カオルは、しばらく迷っていたが、私の真剣な表情をみて諦めたようにみえた。
「分かりました。連絡先を教えればいいですか!?」


私はカオルに手帳を渡し、電話番号を書いてもらった。そして、その番号かでたらめの番号だと知ったのは、東京のアパートに戻ってからだった。












Android携帯からの投稿